Nerdのつぶやき

初のスピーカーの試聴に旦那と二人で行ってきた。

今回立ち会ってくれたのは、先日私たちの少ない予算に薄ら笑いを隠し切れなかったショップマネージャーではなく、ぱっと見はどう見ても「nerd」という言葉しか思い起こさせない青年。

しかし、人は見かけで判断してはいけない。試聴用の部屋に移り、ディスカッションを始めるやいなや、彼はnerdからextremely enthusiastic, knowledgeable and helpful shop assistantに格上げされた。

まずはどんなものを求めているのかを説明する。端的に言うと、「Hi-Fiにほとんどの重点を置いたAVシステム」。予算の上限(当初の予算の6倍)を伝え、ただし自分たちが試聴して満足するなら半分の予算のセットで落ち着くつもりの意図を伝えた。

「変にきこえるかもしれませんが、僕はHi-Fiが専門なんです」という彼は目を輝かせて、「音楽にそれだけの重点を置くなら試聴は音楽からはじめましょう。ほとんどのAVレシーバーは映画に関してはそつなくこなせるので、Hi-Fiアンプの代用としてどれだけの力を発揮できるのかが判断の基準になります」と説明してくれた。とても賛成。

まずはボトムラインとして私が提示したB&Wの685+Denon AVR2310+Denon DCD510からはじめる。いくつか好きな曲をかけてもらう。

スピーカーからの振動が聴覚を通して脳内に作り出す空間感(soundstageという専門用語がこれにあたるのだろうか)はこの値段のスピーカーにしては広いのではと思う。バックグラウンドに流しておく分には十分な感じだ。明瞭さと細部の描写もひどくはない、が、全体として何かベールがかかっているような感じが否めない。

ど素人の分野でしかも外国語で自分が感じたことを説明するのはきわめて難しい。しかし、めげずに何とか伝える。

「一気にグレードアップしたシステムを使って『ほら、こんなに違う』と提示するのは簡単ですが、そうではなく、一つずつコンポーネントを変えていって、徐々に何がひっかかっているのかを解明していきましょう」

おお、実験心理学の知覚の恒常性の世界ではないか。たまらん。(私もnerd)

まずはリフレッシュの意味で最初と同じセットで30秒試聴する。次にケーブルをシールドされたものに切り替え、同じ音楽を30秒試聴。「音の真ん中部分にほんの少し深みが加わって(なんだそりゃ)、高音がクリアになった感じがします」と私。旦那はぴんとこないのか沈黙を保つ。

「そう、いい線いってる。That's what it's supposed to be doing。ちょっと、待ってね。試したいものがあるから」といって彼はうれしそうにストックルームに姿を消し、小さめのスピーカーを持って戻ってきた。「じゃあ、次にもう一度前と同じセットで同じ曲を30秒かけた後、この違うスピーカーに変えてみよう」

このスピーカー、(DynaudioのMC-15と後で説明を受ける。B&W685の2倍以上の値段)は旦那にも私にも全くうけず。「B&Wと比べると音の空間は明らかに狭い感じがします。明瞭さと素早さが増したのははっきりわかります。でも、私にはそれが少し耳障りな感じがします」と説明。

彼はもう一度B&Wのセット+シールドケーブルで同じ曲をかけてくれた。「どんな感じがしますか?」

「オールラウンダーという感じです。適度にいい。でも、何かが欠けていてぐっと心をつかむものがない。まあまあな音だけれど、fall in love with itというレベルではまったくない感じです。何を言っているかよくわからないかもしれませんが」と私。

彼はemotional involvement、depth of soundstage、musicalityといった言葉を使って私が言いたかった内容をパラフレーズしてくれ、「何を言っているのかはよくわかります。システムとしては少しレベルアップになりますが、試してみたいものがあるのでちょっと待っててくれますか?」といって再び姿を消した。と、違うスピーカーのセットをうれしそうに抱えて戻ってきた。「ちょっと準備をするから待っててくださいね」といって忙しくセットアップをはじめる。

「Oh, my god, he's firing up the Arcam 500 now」という旦那のうなり声を私は「really?」とさらっと交わす。私にとってはこれはもうshoppingではなく、experience/educationの世界。最高。

前回と同じようにB&W685をレファレンスとして、次のセットを試す。

「The veil's gone now. How sweet and romantic they sound!」と満足の声を上げる。

Arcam AVR500、Arcam FMJ CD17、そしてDynaudio Focus 110のコンビはロマンチックなMidoriのバイオリンとベルリンフィルのオーケストラを細部の描写を落とさずに麗しく奏でてくれた。スピーカーにclarity, details, resolutionといったものを追求する傾向がある昨今、このlistening fatigueを起こさせないmusicalなスピーカーを個人的にもとても気に入っていると彼は情熱的に語ってくれた。「音楽を聴いている最中に反射的にボリュームを落とす必要性を感じないスピーカー」なのだそうだ。

「クラシックが好きなあなたの趣味には合わないかもしれないけど、ジャンルが違う音楽という意味でちょっとこの曲を聴いてみて。ものすごくレコーディングがいいから」といって彼はCity Owlかそれによく似たsoft male vocal popをかけてくれた。So gentle and mellow.

この曲を使って次の「ちなみにこれより上になると何になるの?」スピーカーのAudiovector S1のを試してみる。Focus 110と比べると、空間の広さは維持され鮮明さが耳障りにならない程度に増す。その結果、放送室のモニタースピーカーを通して聴いているような、生な感じが増す反面、Focus 110が奏でたやさしくリラックスした感じが失われてしまう。「とろけるようなsweet & mellowなボーカル」から「質の高いデモテープ」に豹変した、といえばいいだろうか。

そうか。試聴が重要というのはこういうことをいうんだな。スピーカーのパーソナリティーの違いが非常に強いため、単に予算云々だけではなく、その音が好きな音かどうかというのを真剣に判断しなければいけないのだ。

What a journey.

1時間半の試聴を終え、プライスリストを受け取り、家路についた。今週末は別の場所でATC SCM11の試聴に行って来る。
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by uk_alien | 2010-03-19 05:21 | just a diary