権威とユーモアのバランス

我が家の庭に面した広い牧草地はUKでも大きめのチャリティー団体が所有している。この土地の草が伸びすぎないように管理するのは20~30頭くらいの牛たちの仕事。

さて、先日旦那が「犬連れでたちの悪そうなローティーンの連中が牛を追い回している、こういうのは我慢がならない」と息荒く庭から家に上がってき、即座にチャリティーの緊急ラインに連絡を入れている。

目下牛たちの群れは雄牛が一頭と、沢山の子牛、さらに子牛の動きに敏感になっている雌牛たちといった成り立ち。イギリスではハイカーや犬が牛に踏み倒される事故は頻繁に起きており、特に子牛がまだ幼く群れの動きが不安定なこの時期は一番危険だ。

といってもあの連中が牛に踏み倒されて大怪我をするのは私たちは全く厭わないのだが、公共/他人の財産と公共の秩序への尊重の念を全く所持しないこの大ばか者たちが普段は気性の大変穏やかなこの牛たちを悩ましていることには非常に腹が立つ。

「連中、レンジャーが来るまでにどこかに行っちゃうよ、きっと」という私に、「そうかもしれないけど、ゆるせないんだよね、ああいうの」と旦那。

案の定彼らは次のトラブルを求めてどこかへ消え去ってしまった。仕方ないとウォルターを連れて散歩に出ると、ちょうど車で駆けつけたレンジャーと会うことが出来た。

状況を話し、運よくなにが起こったのかを目撃し連中のことを見知っている別の女性の証言もあって、レンジャーへの注意喚起という目的は達成することが出来た。

このエリアを7年担当しているこの気のいいレンジャーは、天気の良さも手伝ってか、公共の土地管理に関するいろいろな話を聞かせてくれた。

膨大な量の不要物の投げ捨て、話にならないくらい自分勝手な苦情や要求、政府のレッドテープ、「レンジャー」なはずなのに膨大なデスクワーク…などなど。

それにしても話しを聞いているうちに人々のあまりの自分勝手さに吐き気がしてきた。そんな体験を沢山しているのにどうして笑い飛ばせるんだろう?でもそういう気性だからこそこの仕事を続けていかれるんだろうな。

先のローティーンのグループについて彼は「そうだ、ショットガンのライセンスをとったらどうです?お宅は眺めがいいからターゲットは外さないはずですよ」と笑いながら旦那に言う。「警察沙汰になったらdyslexicのふりをするんです。『僕のライセンスにはpeasants(農夫)は撃っていいって書いてありますよ、あ、pheasants(キジ)だったんですか?読めなかったなぁ』って笑って逃れることが出来る」

「羊用の囲いはいつも電気ショックのテープを使うんですよ。コストが安いですし。で、ある日犬を散歩してる男性が、『誰が犬たちを電気ショックから守るんだ。危ないじゃないか』って血相変えて文句を言ってくるんです。『誰が守るって、えっと、オーナーでしょう?犬をコントロールするのは』ってさらっと言い返しましたけどね」

この権威とユーモアのバランスがイギリスの秩序を保っているんだよな、とふと思う。

奥さんからの電話を受け、「げ、もう帰らなきゃ。家はすぐそこなんだ」と、入ってきたゲートとは別のゲートを開けようとする彼。

「まいったなぁ。誰かがパッドロックの鍵穴に枝かなんかを突っ込んだので全く鍵が入らない。いやぁ、いつものことなんですよ。みんな僕らが(車用の)ゲートに鍵をかけることに腹をたてるんです。自分の土地じゃないのにね。スーパーグルーでべったり貼り付けられたこともありますよ。それよりかはましかな、これは。でもとれないなぁ」

そうして彼はあきらめてもとのゲートに戻っていった。

権威とユーモアのバランス。私には到底出来ない仕事だ。
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by uk_alien | 2012-06-23 02:44 | just a thought