Father and Son

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バンクホリデーは義兄一家の家にお泊り。

働き者の甥っ子はこの9月からAレベル(17歳)。今回のASでMaths、Chemistry、Physics、GeographyでオールAをとった。

彼は勉強とDeputy Headを両立する一方、週に3日~4日アルバイトをしてPPL(Private Pilot's Licence)を既に取得している。小さい頃から夢は商業パイロットになること。しかし、実際は空軍にでも入隊しない限り、プライベートのフライトスクールの費用は庶民に払えるものではない。

それでも夢は簡単には諦めきれないのは人の常。「大学か、フライトスクールか、どうするのか決めたの?」と本人にきくと「決められない」という。「大きな借金をしょってフライトスクールに行って、でも、もしかしたら学校が終わってパイロットの職に就けないかもしれない、そのリスクを負いたい?」ときくと「負いたい、それでも行きたい」という。

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くそ真面目で殆ど休みなく働く彼の父親は、億万長者の兄と自分を比較し、息子の夢をかなえさせてあげられない不甲斐なさにいらつく。「多額の借金をして職が保証されてもいないフライトスクールに行くより、トップの大学に行っていい仕事に就く方が絶対にいい」と考える一方、フライトスクール関して息子に明確にNoと言い渡せず、「足りない分を自分でファイナンスする気があるなら行けばいいじゃないか、お前次第だ」と言っている。子どもの将来を決め付けないという意味ではいいのだろうが、未知の不安と夢と家庭の財政の現実という三竦みはティーンには非常に酷というものだ。

決してアカデミックとはいえないこの父親と母親は、息子のコース選び、大学選びには一切お手上げで関知しない。従って、オックスフォードレベルの実力を持つこの息子は自分でprospectusを集めながら悶々と悩み、ティーンの男の子にありがちな父親との確執に悩みつつ、夢と現実の線引きと、現実のその先の決断を孤独に強いられている。

これはフェアじゃない。

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ディナーが終わって、彼に将来についていろいろ聞くと、次から次に大学やフライトスクールのprospectusや、学校からの個人進路分析の資料、挙句の果てにはChemistryやPhysicsの教科書まで自分の部屋から持ち出してきた。誰かが自分の進路に真剣になってくれているというのがうれしいのだろう。美人の叔母さんならなおさらだ(違うか)。

個人進路分析にざっと目を通す傍ら、父親に「これ、目を通したの?」ときくと「まさか!そんなの読んでもわからないよ」という。父ちゃん、頼むよ。

資料を見ながら、学校では誰にどんなアドバイスをもらっているのか、自分ではどう思うのか、なぜ特定の科目が得意で興味があるのかなどをいろいろ話した。そうしていくうちに、どうやら「決められない」といいつつも、既に現実的にフライトスクールは諦め、就職の際非常に有利といわれている得意な科目を専攻して可能な限りベストな大学に進む、という方向に気持ちを落ち着けているようだった。結局は本当に賢いのだ、この子は。でも賢いからといって放っておいていいというものではない。

「昨日は『決められない』といっていたけれど、実は大分決心が固まっているんじゃないの?」ときくと、「お金があったら絶対フライトスクールに行く。でも、空を飛ぶのはいい仕事について、プライベートの時間に飛ぶからいい」という。「それでいいと思う?そうすることで後になって後悔すると思う?」と聞くと、「後悔しないと思う」という。うう、健気だ。

私は彼の進路がずっと気になっていたので彼の反応を見てとても安心した。

その一方で、多くを犠牲にし手塩にかけて育ててきた息子が、自分よりはるかに優れた知性を持つようになり、自分の手から自分には全くわからない世界へ飛び立っていくということに対する父親の戸惑いと苛立ちが手に取るように感じられた、そんな数日間だった。
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by uk_alien | 2007-08-30 05:03 | family