名前の話

私は一度目に結婚したとき、自分の苗字を変えなければいけない事実に愕然とした。結婚にそういうことが込みこみだったということを考えなかった若気の至り...といえばそれまでなのだが。

婚姻届を出す前に当時の配偶者とかなりもめた後、結局は私が折れた。インターネットで一般の人が情報や意見を共有しあえる今とは全く違い、当時は女性がそこまで自分の苗字に固執するのは偏屈としか見られなかったし(私の周りで意見を共有する人は皆無だった)、とりあえず式も挙げてしまったし、まったく離れた場所で新しい暮らしを始めるのに、役所がらみの届出等々がみっちり立て込んでいたため、これをとりあえず旧姓で一回、ひょっとして新姓でもう一回という二重の作業を考えると気が重かった、というのも否めない。

銀行口座、運転免許証、厚生年金と次々に自分の名前が変わっていくを体験するのはつらかった。外国暮らしでいろいろ厄介な出来事が続く今から当時を振り返れば、やっと「たかが苗字」と思えるようになったが、やはり当時にしてみれば、少しずつ築き上げてきた自分がどんどん「XXさんの奥さん」という付属の人になるような感じがしてやりきれなかったものだ。

イギリスはその点一歩進んでいる。結婚などしないでパートナー同士でいても法的な権利は結婚しているカップルと全く変わらない。ま、子どもを生めば子どもがどっちの姓を名乗るんだという意思決定プロセスが入るようだけれど。また、結婚して、オフィシャルな記録は全て新姓に変えるけれど、今まで築き上げてきたビジネスのネットワークへの影響を考慮し、会社の記録では旧姓で公然と通っている人も少なくない。

通称もよく使われている。ElizabethやLyndaが短くなって、社内では署名もメールも全てEliやLynになっている...というのはよくある話。でも、本来の名前とは全く関係のない名前をしっかり通称として通している人もいる。本名は花子さんなのに真由美さんになっている、みたいな。

こうした通称、略称、正式登録名を個人の事情に合わせて受け入れてしっかりアドミン処理をしているイギリスの会社や役所には感心してしまう。そういうところにだけは神経が回っているんだな、と。

離婚することで結局は戻ってきた私の旧姓は、再婚した今でも第二のファーストネームとしてしっかり残っている。残せるとわかった時はそれはそれで非常にうれしかったのだが、時間がたった今となってはフォーマルな際に使用するだけで、大抵は抜かしてしまっている。歳を重ねるこことで細かいことはどうでもよくなったせいなのか、新天地で自分を一から築き上げなければいけなかったからなのか、単に使ってもどうせイギリス人は読めないと思うからなのか...。
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by uk_alien | 2007-12-20 01:54 | just a thought