ノー・イングリッシュ、ソーリー

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イギリスに住んでてよかったーと思うことは勿論たくさんある。私の3大要因は、

①地震がない
②眺めのよい庭付きの家がロンドン通勤圏でまだ買えた
そして、
③お化けが出ない

勿論イギリスにもお化け話はわんさかある。ついこないだも70年代の有名なポルターガイスト現象(真偽は勿論謎のままらしい)がラジオで取り上げられていて、録音された「ポルターガイストの声」まで流してくれるという。一人で聞いていたので、う~こわい...と思っていたが、興味深々。くるぞ、くるぞとわくわくして耳をすましたところ...

はて、何を言っているかわからない。

ふふふ。だからよいのだ!私はもしイギリスでお化けが出てきても、「ノーノー、ノー・イングリッシュ、ソーリー。」で通せると思ってる。それに相手がどんなに恨めしい声で訴えてきても、私のリスニングはそんなか細い声がききとれるほどよくない。どうだ、まいったか。

しかし、どうやらこの目論見は甘かったらしい。世の中どこにいてもいろいろ不思議なことはあるもの。Nantokaさんの記事をわくわくしながら読んでいて、ふと自分の経験を思い出した。

2年前、旦那の友人が地にしっかり足がついたdon't mess with me, babyタイプのアイリッシュのガールフレンドと一緒に一戸建てを買った。よし、ハウス・ウォーミングだー、ということでお邪魔することに。

外観はイギリスらしい、窓ガラスの中に黒い鉛線が格子状に入っている古い窓をそのまま残した品のあるおうち。明るく向かいいれてくれる二人に挨拶を済ませ中に入り、家の中心にある玄関を入ってすぐ右側のダイニングルームに足を踏み入れた。そのとたん、「ぶわっ」と急に回りの空気が重くなった。重い、息苦しい。ものすごい険悪なムードの場に何の気なしに足を踏み入れちゃったような、でももっと物理的に重い感じ。

「いやだ!」と思いながらダイニングルームとつながっている増築されたキッチンへ非難した。そこは大丈夫だった。キッチンから庭へ出て、ダイニングの壁とつながってるガレージを見た。うーん、どうもよくない。何がってわからないけど、よくないのだ。でも問題はガレージよりもダイニングルームだ。家族関係のことかなにかでものすごく怒ってる中高年の女性の感情がむき出しで漂っている。

家の中をアイリッシュの彼女が案内してくれた。面白いつくりだ。玄関を入ってすぐ眼の前にある階段を上がると、踊り場のようなところで一旦とまり、そこから折り返してフロントにあるベッドルームへ、それと対象をなしてバックにある2つのベッドルームへ、そして右側増築部分(ちょうどキッチンとダイニングルームの上にあたる)のマスターベッドルームへと、それぞれに階段が伸びている。あまり機能的とはいえない。

3つのベッドルームはまあ普通だったのだが、最後に見せてもらったマスターベッドルームに、ドアがない。これはものすごく変だ。引越しの際にもってっちゃったのかな~と思ってよくよく見ても、取り外した形跡がない。しかも、このマスターベッドルーム内に専用のバス・トイレが付いているが、そこへのドアもない。彼女いわく、「変よねー、ついてなかったのよねー、トイレするときに困るわよねー」

二階の後、一階のフロントにあるレセプションルーム、バックにあるセカンドレセプションルーム(リビングルーム)、そして最後にこのセカンドレセプションルームからつながるグラニールーム(お年寄りと同居するときに作る、母屋とつながった風呂・キッチンのついた独立した部屋)を見せてもらった。すると、さっきのダイニングルームが青黒っぽいようなモノだとしたら、今度は白っぽい、穏やかな感情のなごりのようなものが感じられた。パティオドアがついているが、そこから庭を眺めるのが好きだったのがよくわかる...ん?待てよ?誰がだ?

なーんかもう、疲れたし、絶対ダイニングルームには行きたくないから旦那に理由を話してリビングルームにとどまった。アイリッシュの彼女が紅茶を持ってきてくれたので3人で腰を落ち着けた。旦那が面白半分に私がこの家なんかいるって感じてるんだけど...と持ち出すと、私が口を開く前に、彼女がさも当然のように、

「ああ、ダイニングルームのあれでしょう?問題よね。怒ってるのよ。もうすぐ彼が出張で家を空けるから、そのとき腰を落ち着けてゆっくり話し合ってケリをつけるわ」

え?

「あっち(グラニー)はもう全然問題ないの。ハッピーなのよね。」

異国の地で異人に異国の言葉で、こうずばり指摘されたときの気持ちを想像してほしい。一瞬マジックや催眠術のトリックを思い出した。そうだ、それに違いない...。でも私まだ何も言ってなかったし、言われてなかったよね...。

彼女のボーイフレンドは一切そういうことは信じない。いいことだ。旦那も特に何も感じなかったそうだ。彼女いわく、今はアレの怒りも大分おさまり、すっかり暮らしよくなったらしい。ただ、彼女が連れてきた猫が庭の池にはまって死んでしまったそうだ。私はといえば、二度とあの家には足を踏み入れていない。怖い、というよりは私にあんな怒ってるモノに対抗はできない。ノー・イングリッシュという次元じゃないのだ。「柳も幽霊」と笑われるかもしれないが、私にとっては「君子危うきに近寄らず」だ。
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by uk_alien | 2006-02-13 01:58 | just a thought