私は「日本人」

私は、「日本で生まれ育ちました」という意識はあっても「日本人です」という意識は薄い。ごくごく一部を除き、生活の全てがイギリスに所属しているのだから日本への所属意識が薄いのは当然といえば当然だ。日本語を使う機会がごく僅かなら思考言語も英語、稚拙な言語レベルの思考は稚拙なレベルにしか到達しないというのは残酷な事実だが、便宜上そして精神衛生上、生活言語で思考をするのが一番自然で実際的だと私は結論している。別段通訳ってわけでもなし、両方の言語を磨いていこう、という気はない。

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しかしながら、使わない道具は錆びる。「腐っても母国語、三つ子の魂百まで、自転車だって一度乗れるようになればずっと乗れるんだから日本語だって同じ」と考えるのは甘い。

先日数年ぶりに体験したオフィシャルな日本語会話シーン。目の前で一オクターブ高い声で流暢に日本語を話す美しい若い女性に対し、車のヘッドライトを浴びたキジ状態になって自動翻訳顔負けのすちゃらかな日本語が私の口から飛び出す。ああ...もう。

用事が終わって暫く歩くことにした。どちらの言語も満足に使いこなせない自分が少し哀しくなり、すちゃらかでも自信をもって押し通せない卑屈な自分が腹立たしく思えた。

とりあえず、久しぶりのロンドンということで、ロンドンオフィスの人たちとパブで落ち合い、ビールでリフレッシュして気を取り直す。さらに、そこで友人と落ち合って日本の食材を買いに店に立ち寄った。カウンターで数種類の品物を注文する。なんか自分が流暢じゃないのはわかっているけど、「オフィシャル」な場じゃないんだから気にしない。そう、そうこなくっちゃ。何事も自信よ。

で、支払いを済ませて店を出た後、友人が一言。
「XXさんの日本語、もう、全然だめだね。めっちゃ笑える。ものすごかったよ、あのカウンターでの会話。最高」といって大爆笑された。
もう私も笑うしかない。

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人称代名詞の使用が妙に増加し、文法に亀裂が生じ英文法に日本語の単語を当てはめるようになり、「~しました」が発音できなくなり、一度で聞き取れず繰り返してもらうのに「すみません。もう一度繰り返していただけますか?」と妙に美しい日本語で返し、「あったまわる~!」と自分に腹を立てつつ英単語を日本語に混ぜる頻度が高くなり、どういうのか分からないのでリーダーズで英語から日本語を引き、ハンガーを「えもんかけ」というなどカタカナで済む表現を懸命に和語で言おうとしている自分を自嘲し、反射的な思考をほぼ自暴自棄になりながら流暢さを装おうと懸命に速攻で訳して驚愕的な日本語をのたまい、「....はありませんね?」と質問され「いいえ、ありません」と答える...

それでも「国籍はどちら?」と問われれば、否が応にも赤色に金の菊マークがぬかれた日本国旅券が頭に浮かびとりあえず「日本人です」と答えるわけだ。
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by uk_alien | 2008-11-09 04:00 | going native