カテゴリ:concept( 9 )

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旦那に私とソーシャルネットワーキングは水と油だと言われる。

そんな私でもfacebookやlinkedinは何となく存在価値が理解できるけどtwitterだけはどうしても理解できない。

とりあえずアカウントを作って試してみる。だめだ、やっぱりわからない。
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by uk_alien | 2012-04-24 19:54 | concept

自分の心

帰国後の翌日、会社に出勤して心配していた大勢の同僚から声をかけてもらった。

「What was that like?」ときかれて返答に困り「fear」と答えた。

地震の恐怖、津波の恐怖、余震の恐怖、家族や友人の安否の懸念ともしもの恐怖、そしてガソリン・交通麻痺が生み出す物資の不足とそれにともなう大衆の反応への恐怖。そして放射能漏れとそれがもたらす影響への恐怖。

家族や友人を、そして滞在中に接触のあった様々な人たち - とても親切な食堂のオーナーのご夫婦、笑顔で応対してくれるスーパーのレジのお姉さん、大変な中熱心にお年寄りのケアをしているホームのスタッフの方たち、アルバイトだろうに災害の中せっせと真面目にコンビニでレジを打つ若い女性、非常にプロフェッショナルにきめの細かいサービスをしていた成田のBAのグランドスタッフ - こうした人たちを後に帰国することに強い罪の意識が沈めても沈めても浮かび上がってきた。

それでも、こうして不安で不便な中でも様々な形で日常生活を続けていく人たちを目にすることで、被災された方たちやそうでなくとも不便を強いられている方たちに思いをよせて罪の意識を覚え感情的に不安定な状態に陥ってしまうより、自分の生活を自分なりに続けていくことが大事なのだという強い思いを感じ、自分の精神ケアもしっかりしようと襟を正した。

精神ケアといえば...

地震のあった日の翌日から、私も姉も姪も次々に展開するニュースを目の当たりにして恐怖と不安でテレビの前から動けない状態だった。ふと気づくと、異様な虚脱感が漂い、妙な空腹感を覚え、体が痛い。確かに最初の地震以降、日夜を問わず数時間おきに鳴り渡る警報に疲弊しきっていることは確かなのだが、それ以上に何かがおかしいと思いはじめた。「何のためにテレビを観ているんだろう」と考えたときに自分は「自分の状況は被災者達よりましという罪悪感から彼らの状況を肌で感じ感情を移入する義務感」を感じているんだということと、そしてどこかで「私たちの未来は大丈夫、もう心配はないから安心しなさい」という決してありえないニュースを待っていることに気づいた。だから、外出するのは非常に勇気がいったのだが昼間は父の墓参りに出かけ、家に帰ってもニュースは意識的に見ないように決めた。姉のコレクションからオペラを観たり、夜は三人でボードゲームのScrabbleをしたり。最初は単に逃避的行動かなとも思ったが、とても必要なことなように思えた。

と、友人からメールが入った。(蛇足だが、旅行にはKindle3/3Gを持っていったのだが、これがとても役にたった。)彼が臨床心理士から受け取った災害時の精神ケアの注意点に関するメールをForwardしてくれたのだ。下記はその内容:

1.今こそ自分自身のメンタルケアを。

今はまだ地震直後であり、だれでもアドレナリンが噴出している時です。
こういう時は何かをしたくてたまらなくなりますが、まずはその自分自身の感覚に意識を向けてみましょう。細々意識してみることをトラッキングといいます。自分自身に対するサポートを最初にしてください。私たちが落ち着いているか、不安エネルギーをまき散らしているかによって、様々なことが違ってきます。

2. テレビの視聴には気をつけてください。*特にお子様、感受性の強い老若男女の方々。

身体がだるくなったり、ボーッとしたり、涙が出てきたり、妙な罪悪感が湧いてきたり、不安状態にある自分に気づいたら、即刻テレビを消すか、必要なニュース速報のみが流れてくる全く違う番組にしてください。
テレビで繰り返し流される悲惨な映像は、非常に強い吸引力を持ちます(とかく最近のメディアは人々の不安をあおるのが特徴です)。
人によっては催眠にかけられたようにテレビの前から動けなくなる人もいるでしょう。こうした映像に何度も何度も自分をさらすことは、何の役にも立ちません。
***私たちが生きていく為に必要な情報が得られれば、それだけでいいのです!***
トラウマの渦の引っ張り込む力はとてもとても強力です。サンフランシスコ大地震の時は、繰り返されるメディア報道が人々にもたらすネガティブなインパクトは甚大だったといいます。

3. 今一番に必要なのは、身の安全を確保することです。
避難場所、食べ物、人々が安全かどうかをチェックすることが優先です。

4. そして非常時に最も大切なのは、人とのコミュニケーションです。
人を求めるのは、とてもとても自然なことです。
その時の自分の思いを言葉にして、所属するコミュニティでシェアしたり、身近な人に伝えてみてください。もちろん、手段はメールでも構いません。
「メールに書きながら落ち着いてきました。大丈夫です」とおっしゃる方、多いです。

以上、共感した方は、おともだちに共有してくださいませ。


自分たちが漠然と感じていたことをプロの臨床心理士がきちんと文章にしてくれたような気がし、とても心強く思った。そうか、やっぱりそれでいいんだ、という励ましになった。そしてこのメールをForwardしてくれた友人にとても感謝をした。

事態が展開するにつれ精神ケアに必要な心のもちようも変化してくるに違いない。短い滞在だったが、こうした災害時の精神ケアの重要性を身をもって感じた。
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by uk_alien | 2011-03-20 19:08 | concept

Upper Crust

先日のLost in Austen以来、すっかりコスチュームドラマにはまり、そんなさなか友人がJane EyreのDVDを貸してくれた。

このCharlotte BrontëのJane Eyreは私が初めて読み通した英語の本。ずっと前、イギリスに1年間滞在したとき、ビザの延長のために通い始めた語学学校から借りて読んだ。だからちょっと思い入れがある...と思ったのに全然内容は覚えていなかった。(おかげでDVDがとても新鮮に見れたのだけれど。)

Janeを演じているRuth Wilsonがとても上手。Darcyを演じたElliot Cowanもそうだったが、内に秘めた感情を微妙に演じている。

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たかがコスチュームドラマ、されどコスチュームドラマ。こうしたドラマを見ることで、普段疎遠な、しかし確実に現代に存在するイギリスの階級社会へ直感的認識は嫌がおうにも深まる。昔ほど莫大なスケールな相続はないのかもしれないけれど、いまだそうした'inheritance'のおかげで日銭を稼ぐ必要が全くない生まれながらにして金持ちで有閑な連中が存在する一方、このつつましいセミのモーゲッジをひたすらせっせと払い続けている私達。ま、考え始めたらきりがない。屋根がある分よしとしよう。それに、精神世界が豊かであれば多少の金銭の欠落は補えるというもの。

先日仕事でこちらから出した手紙に記載された名前の敬称、Mrを全てSirに敢えて書き換えて返信してきた人がいた。最初は「どっちでもいいじゃん。書き直さなきゃ気がすまないって言うのも哀しいよね」と思ったが、興味をそそられて書類を見ると、彼の父親の職業はBaronetとある。なんじゃこりゃ、と思って辞書を引くと、'a member of the lowest hereditary titled British order, with the status of a commoner but able to use the prefix "Sir"'(英国の世襲可能な地位の序列で一番下のランク、平民身分だが名前の前にサーをつけられる)とある。

「なんだ、貴族でもないくせに、更にかっこ悪いじゃん」と思いながら奥さんの父親の職業を見てみるとLandlord(地主)。上流階級の一番下にぎりぎりでぶらさがっている層というわけか。妙に納得して彼らの婚姻の地を見るとSt Margaret Church of Westminsterとある(Westminster Abbyの隣にあるやつ)。やっぱり、ほら、そこは対面上プロパーに。

しかしながら、書類に目を通すうちに、なんだか最初の「SirでもMrでもどっちでもいいじゃん」という感覚から、引き継いだ称号への彼の誇りと尊敬、そしてそれを正式に維持することへの一貫した態度が肯定的に受け入れられるような気がしてきた。家に返って旦那に話すと、「世襲性の地位で一番低かろうが、貴族じゃなかろうが、Baronetっていったら、真の上級クラスだよ」と真顔で言う。

僅かながらに畏敬をこめた彼のその言い方と反応から、この国の教育や歴史知識を共有しない私では皮膚感覚的には到底感じえないものを少し感じられたような気がした。
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by uk_alien | 2008-11-10 04:14 | concept

ちくり文化

最近よく目にする耳にするのが、ちくりのためのホットライン。

「誰かが税金をごまかしてると思ったら、連絡を。我々が調査します。あなたの詳細を残す必要はありません。」
「ベネフィットをごまかしてる人がいたら、匿名で連絡を。」
「ホースを使ってる隣人を見たら連絡を。」(今年の水不足で、イングランドの大部分はホースパイプの使用禁止)

この3番目のホースパイプ使用禁止指令が施行されてからわずか数週間なのだが、ある水道会社によると、既に数千件にのぼる連絡がちくりホットラインに入っているらしい。

イギリスってそうなんだ...。さすが島国、国民感情をそういう形で煽ってちくりあうたあ日本とよく似てるじゃないか、と思ってしまった。でも、「無名で役所にちくって終わり」という点は「ちくって皆で村八分」と比べると、比較的個人主義を象徴している。

ちなみに、沢山の植物を植えてある我家の庭は水まきが欠かせない。夏の夕方ホースを使って場所を移動しながら優に40分~1時間はかかる。庭が広いのではなく、ひとつの植物の根元に30秒くらいじっと水をまかなければいけないので結構時間がかかるのだ。これをジョウロでやるのかと思うと気が遠い。うまい具合に計画を立てなくちゃ。お年寄りは大変だろうなとふと思ってしまう。

雨どいのパイプにつないで雨水を貯めるでっかい樽、water buttは今のところ二つあるが、これでは絶対に足りないだろう。2~3樽買い足して、しかも夏場はこれらをホースで満たして(それはOK)しのぐことになるか...。今年のイースターのガーデンセンタービジットはwater buttショッピングで幕開けだ。
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by uk_alien | 2006-04-15 19:15 | concept

大変なお仕事のお給料

私の義理兄の一人はパートタイム契約のGP。年収は8万ポンドをくだらない。

イギリスの家族医、General Practitioner(GP)の月給はヨーロッパ一高額なのだそうだ。2005年の総選挙前に実施された20%の昇給後は年収10万ポンド(2千万円)以上のGPもざらでない。この20%の昇給は糖尿病などの慢性病の治療行為など「GPが以前は行っていないとされていた医療行為を行うこと」に対する報償とされている。

しかし、そうした治療行為は「もともとGPがやっていたこと、そしてもともとGPがやるべきこと」で、それに対して20%もの昇給は大きすぎると批判されてもいる。さらなる税金、300milポンドがこの昇給分に当てられた。

同時にGPは新しい契約で「週末、夜間の診療はしない」という選択権を与えられた。しかし、契約上「しない」と選択して、「仕方ないな、やってあげる」とすると、より高いレートで報酬が与えられる。ん?何か変だぞ。

時間外(週末と夜間)にオープンしている某サージェリーでは、この昇給後、患者一人あたりのコストが3ポンドから5ポンド弱に自動的に跳ね上がった。このサージェリーのコストは低い方で、他のサージェリーでは2倍、3倍のコストを政府に請求するところもあるそうだ。この時間外サージェリーで勤めるドイツ人GPのインタビュー。「この時間外の契約はものすごく稼げる(lucurative)。一週間で5,000ポンドかな。ドイツじゃ一ヶ月かかってもこんなに稼げないからね。」

義理兄は大晦日の夜勤を申し出て一晩に千数百ポンドを稼いだといってたっけ。もっと多かったかもしれない。翌朝うつろな目で、やっぱりもうやらない、といっていた。皆がシャンペン飲んでよっぱらってるときに自殺未遂の男をなだめすかすの警察に引渡すのでばたばたするのはなんともむなしいそうだ。

彼の家で行われる正月恒例のファミリーパーティーで、義理兄に「君は仏教徒だろう?」ときかれたのでそうだと答えると、「仏教徒は文句を言わないんだって?すばらしい宗教じゃないか。」

訴訟の危険を賢明に避けつつ、ききたくもない患者の不平を永遠にきくことにうんざりしている彼は今年本格的なサンドバッグを購入した。
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by uk_alien | 2006-03-31 17:56 | concept

プライベート病院

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私は、働いている間はずっとプライベート医療保険をかけていた。しかし結局今まで一度も自分のことで使う機会はなかった。仕事を離れた今は、とてもではないがそんな高額な保険料は払えないので、もし何かあればNHSに頼ることになる。このまま暫くもしものことがないことを祈っている。

さて、結構な金額の所謂NHS内のプライベート医療ではない「プライベート病院」とは一体どんなところなんだろう?豪華ホテルのような最新施設を想像していた。が、勿論そんなもの、イギリスに存在するわけがない。

これまでに機会あってロンドンにある2ヶ所の大手プライベート病院を訪ねた。どちらもなんとなく施設がださい。衛生状態はおそらくNHSよりは断然よいのだろうが、70年代を彷彿させるベニヤのパネルやドア、やや色あせたカーペットや古くなった布張りの待合室のシートなどはせいぜい日本の国民保険病院レベルだ。

ただし、今まで会ったコンサルタントは半端じゃなくその道のプロフェッショナル。そして、いいもわるいもものすごく態度はドライ。「手術したいならしてもいいが、効果は痛みをなくすだけ。他のリスクを合わせると利点は下がる。ま、君次第だ。やれといわれればやるよ。僕にとっての身入りはいいし手術が入ったほうがすぐに帰れるから楽だ。」...おい、おっさん。目の前の苦痛に顔を歪める患者が目に入らんのか。

ところ変わって、今日は郊外にある中規模のプライベート病院へ付き添いで行ってきた。外観は郊外っぽく、屋根が瓦でぱっと見でかいフラットのよう。中の施設はロンドンの病院と同じようになんとなください。しかし、驚いたのは、さすが郊外、患者に白人のイギリス人が混じっている。驚きだ。私を除くと「いかにも外人」っぽいのがいない。

ロンドン中央にあったプライベート病院とは大違いだ。そこの総合受付では、非白人系外人(断然アラブ、ついでアジア、そしてオリエンタル・アフリカがぼちぼち?)の金持ちしか見かけなかった。何人かは黒リモで乗り付けてキャッシュをぼんとカウンターに置きそうなやつらだ。

更に、この郊外の病院、患者もスタッフも、もんのすごく品がいい。まじでもっとちゃんとした服着てくればよかったと思った。スタッフは受付からナースまで全員、今は絶滅に瀕していると思われる白人のイギリス人。きれいな英語で、しかもやさしく患者と会話をする。

待合室で暫く待って、「あれ?プライベートでもコンサルテーションが遅れることがあるんだな」と思っていると、受付の女性がつつつっと寄ってきて、座っている目の高さまで腰をかがめ、「Dr xxの診察が今のところ20分遅れています。申し訳ございません。大丈夫でしょうか?」と囁いた。しかもDr xxのアポの患者一人一人にささやいて回っている。一体どうやって顔を覚えたんだろう?という気持ちと、こうした、イギリスではもう死滅したと思われていた細やかな心遣いあるサービスがこんなところにひそかに生息していたのかとうろたえてしまった。

無料で命がけのNHS、高額だが迅速かつ優れたケアが受けられるプライベート。ここまでかけ離れてる必要はあるのだろうか?プライベート医療は法人として利益を出さなければいけないから患者の負担費用が非常に高額なのはわかる。ではもし利益を出す必要のないNHSで、患者の収入によって負担割合が異なる医療負担制度を導入したら、もっと迅速で、もっとよい医療サービスが提供できるだろうか?それはやはり医療サービスは貧富を問わず平等で受けられるべき、というNHSの基本理念に反してしまうんだろうか。

私なんかが考えても仕方ないのだが、帰ってくる道すがらやっぱり考えてしまった。
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by uk_alien | 2006-03-12 04:28 | concept
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これまで、電車の運転をご職業とするイギリス人には三人お目にかかったことがある。

三人、というのは母集団の数に対しあまりに小さいサンプルなので一般化してはいけない...と思いつつ、...似ている、あまりに似通いすぎている。というのが昨夜友人を介してのお食事会で三人目にあった時の印象。共通点として100%白人、66.6%が中年、がっしり大柄だがお腹はビール腹、という点はさておき、

① ゆったりと構え何事にもあわてない(といえばいいのか'To-be-honest,-I-don't-care'メンタリティーというのか...お気にされないご性格)
② ご職業に大変ご満足されている

昨夜の彼はキャリアを選択する際セールスの職業とこの電車の運転手という二つの選択があったそうだ。セールスの仕事は運転手の2倍の額は稼げそうだったが、有給休暇、病欠の有給処置、勤務時間、ストレス、年金を考えると、長い目でみて断然運転手の方がよいと判断したという。

彼の勤務時間は週35時間。週休三日が3週間に一度やってくる。超過勤務はないため、ホームライフは存分に楽しめるそうだ。勤務を終えれば引き摺るストレスは一切なし。労組さまさま、さらにさま、だろう。

「金融街の連中は年収10万ポンドやらそれ以上って稼いでるけど、働く時間でならすと自分の方が断然多く稼いでいることになるのさ。」

それでも客からの罵倒・暴力はまったくないとはいえないそうだ。一度は夜遅くにターミナルで運転席に座っているときに、黒人からのハッピースラッピング(理由もなく相手を殴っていい気分になるという昨今の風習)、顔面パンチを一度くらったらしい。警察には届けたが、CCTVの画像はターミナルの端までは届かず(!)お蔵入り。別の時には電車を夜の間格納しておくポイントでまだ乗車していた客(なんで最終駅で全員降車のチェックがなされないのだろう、という疑問はさておき)に「降りてくれ」といったところ、いきなりナイフが出てきたので当然すばやくその場を去ったそうだ。その乗客は警察が来たときにはいなくなっていたらしい。

こうした経験を除けば楽チンな仕事、だそうである。

一方、私は東京の丸の内線の車掌と友人関係だったことがある。彼は、小さいときから電車の運転手になりたかったそうだ。しかし、運転手になるのはかなり倍率が高く試験も簡単ではないので、車掌のキャリアを選んだそうだ。彼は車掌の仕事に大変誇りをもっており、乗客の安全が第一、そしてその第一義を遂行しつつ、電車をスケジュール通りに運行するのは大変だがやりがいはあるといっていた。線路のどこどこで○分の遅れが出がちなのだが、どこどこの直線ラインで大抵遅れはとりもどせる云々と真剣に言っていたのを覚えている。これまたサンプルは一人なので一般化してはいけない、のだが、私の記憶では、彼の職務モラールは大抵の鉄道関係者に共通のものであったような気がする。

「郷に入れば郷に従えだよ」

その通りだ。違いを云々しても仕方がない。しかし、私が興味を覚えるのは、一方では「鉄道システム」が定言的に「国にとって重要なインフラストラクチャーの一つ」として両国に同様に存在すことで、あたかも同質のものであるかのような錯覚を私たちに起こさせるのだが、もう一面ではその運行の仕方、運行実績、職員のモラールなどがしっかりとそれぞれの国の文化やだどってきた鉄道の歴史を反映して、その結果、両者はまったくもって「別物」なのだということを思い知らしめるという、そんな不思議な、異文化間のパラドックスに入り込んだような感覚だ。

ちなみにこの不思議さは怒りを超越することでやってくる。

PS こういう不思議な異文化感覚をスタートレックは巧みに表しているなと思う私は実は隠れVoyagerシリーズファンなのだった。
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by uk_alien | 2006-02-26 22:49 | concept

明るい食生活

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大抵のイギリス人は食べ物に関し保守的だ。

ロンドンで働くサラリーマン・ウーマンたちは積極的に各国料理レストランを楽しみ、味噌や蕎麦などの素材を買い込んで自宅で和食作りに挑戦する人達もいる。

しかし、労働者階級にとって、また、中流階級でもロンドンを少し離れただけで、そうした異国の食べ物は問題外となるようだ。日本の頑固親父が「洋食なんざしゃれたもんはオレの口にあわね~」というのと同じだろう。

問題はその「口にあう」保守的なものは何かという点にある。「焼きたてのししゃもと、さっと火であぶった黒はんぺんにちょろっと醤油をたらして酒を飲む」のが最高と考える日本のおやじを、「フライドポテトかポテトチップスでビールを飲む」イギリス人のおやじと比べると、いかに彼が栄養価の高い、しかもカロリーの低いものを食べていることがわかる。

都市を中心に徐々に変化してきているとはいえ、イギリスの典型的家庭料理といえば、冷凍のぶっといフライドポテトとこれまた冷凍のパン粉にくるまった白身魚のフライとこれまた冷凍のグリーンピースがどっかり皿にのっかったもの。これが文字通り毎日繰り返されている家庭も少なくないという。朝食はチョコレート味のシリアル、ランチは異様な色の出来合いの食べ物と甘い炭酸飲料とポテトチップスかお金があればマクドナルド、おやつはチョコレートバーという子供達は勿論野菜なんか食べるわけがない。

イギリス人と接するようになってすぐ耳についたのが、彼らの発する「い゛~」という音。胸が悪くなるようなものに対して発する音だが、主に食べ物系に関しこの音を発する。こういう感情をあからさまに表さない文化を背景とする私にとってはちょっと子供じみて見える行為だ。

例えば、
①シーフードは食べない30代友人は海老だけはむいてあれば食べるが、タパス料理なんかで頭付きで出てきたら「い゛~」を連発。
②マクビティのチョコレートビスケットだけで生きてるようなポッシュなご家庭出身の40代友人は日本食の話をきいただけで「い゛~」。においでもはらうように片手が宙を泳ぐ。
②友人が教える南ロンドンの小学校。8割近くがカリブ系の黒人の5歳児クラス。一日だけ招かれて日本文化についてのカルチャー・クラスを終えた後、海苔巻きや味噌汁を披露。びびりながらも純粋に興味をもって少しでも試そうとする黒人、インド・パキスタン系の子供達と対照をなしたのが白人の子供達。ほとんどは「い゛~」といって眉をしかめ手をつけない。「私はそれは食べないわ」とはっきりおっしゃってくれた子もいた。

実際にあった話。こないだのクリスマスに不幸にして20歳で亡くなったイギリス人男性。彼は物心ついてこのかた、フライドポテトと白パン、そしてたまのベークドビーンズ(煮た大豆をトマトケチャップを薄めたような液体につけて売っている多くのイギリス人男性の心の友)しか口にせず、医者や家族の意見も無視。しまいには抵抗力・回復力が徹底的に弱まり、3本の虫歯を抜かなければ感染死、抜けば出血死という状況に自らを追い込み、後者を選んで出血多量で臨終したという。

昨日旦那にこの超偏食青年の記事を見せたところ、彼は「職場の部下、Hに見せる」といって切り取った。Hは20歳の女性。野菜は一切口にせず、好物はマクドナルドのチキンバーガー、でも「バンズとチキンだけにして。ソースとレタスは一切抜いて」と注文する。

貧乏だった私の家では冷凍食品やレトルト食品は一切テーブルにはのらなかった。旬の素材より割高だったのと、母親が高齢すぎてそういう新しいものを使おうという頭は一切なかったからだろう。結果として安い魚や旬の野菜を使った安っぽい百姓料理が私の「お袋の味」となった。子供時代の経験というのは恐ろしいもので、私は今でもほとんど素材からしか作らず、この母親の安っぽい百姓料理が「日々の食事たるもの」と信じ込んでいる。私も所詮食に関し「保守的」なのだ。ししゃもとはんぺんで酒を飲む日本の頑固親父やチップスでビールをかっくらうイギリス人親父と同じように。

でも同じ「保守的」でもこの食べてるものの違いは大きい。文字通り致命的に大きい。
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by uk_alien | 2006-02-01 20:42 | concept

死刑

...というとすごいタイトルだけど、今年の正月に大学生の英国人女性がタイでレイプされ殺された。その犯人に対し死刑判決が下ったが、被害者の母親は「娘も自分も死罪の存在を支持しない。だから無期懲役を望む」旨正式に発表した。

私は究極的には死罪の存在はよしと考えている。人(システム)が人を裁くことに問題は感じない。なぜなら法律や道徳などを含む社会自体人によって作られたもので、その社会に所属する(生まれる、教育・補助・保護等の利益を受ける)からにはその社会の掟に従う義務があると私は考えるからだ。人(システム)が人を裁かなければ誰が裁くのか疑問である。本人の良心...なんてことは頼むから言わないでほしい。それで世の中が回るなら警察はいらない。

しかも刑務所のコストも考えなくてはならない。英国は死刑を廃止した国のひとつだが、現状は刑務所が満杯、かつ経費がかかりすぎるために、終身刑=十数年の懲役=刑の見直しで半期で出所という図式が成り立ってしまっている。そして出所者が再犯を犯す可能性は高い。また、昨年から経費削減で刑期の見直しは「本人との面接なしで決定されていた」そうで、実際出所した犯罪者が早速金目当てに銀行家の家に押し入り、9歳の女の子の目の前で父親を射殺、母親に重症を負わせた事件もあった。別件で、最近起こった路上物取り弁護士殺人に関するラジオのLBCや新聞報道へのコメントで、「死刑を再導入するべきじゃないのか」という一般市民の声が上がっている。

英国のアムネスティは死刑が世界人権宣言に謳われている1) 生きる権利、2) 拷問を受けない権利と、残酷、非人間的、または下劣な刑罰を受けない権利に反するとして、死刑反対を唱えている。死刑という刑罰は野蛮で文明的ではないという判断だ。

ではそういう野蛮で非文明的な犯罪者をどうするのか?

道徳は悪心と罰、良心と報いそして葛藤で成り立っている。先に例を挙げた銀行家殺人のケースをみてみると、主犯は過去に数回犯罪を起こしているのだが、最後に犯した犯罪は1997年、ローレックスの腕時計ほしさに強盗。逃げる際、被害者を拳銃で3発撃っている。アリバイ工作したが発覚。12年の刑を受け7年で出所。出所たった3ヶ月後にこの銀行家殺人・およびその妻の殺人未遂事件を起こしている。人権擁護の視点から刑務所の施設環境改善運動等も耳に入ってくる昨今、こうした「罰のみえない社会」で道徳が育つとは私には思えない。

野蛮で原始的だから死刑は廃止という理屈はわからないでもないが、その代償として、終身刑だったらその経費は「普通に働く」市民(英国は福祉詐欺や職につかず福祉収入でぶらぶらしている人間が少なくない)がまかない、早期出所であればやはりその市民が犠牲になる、という構図ではなんともいただけない。第一級殺人犯の人権擁護にエネルギーを費やすなら殺人防止にそれを傾けてほしい、と少し感情的にもなってしまう。

死罪にもし疑問を感じるとすれば判決の真偽だ。純粋に誤りが生じる可能性は当然ある。(ここで、既存の司法/社会システム自体に問題があって、死刑を目的に個人を犯罪者にしたてあげるような社会の話は論外とする。)「必要にして十分な証拠が犯人の故意による殺人を明示している場合だけ死罪の確定がなされるべきだ」としても、確定の基盤となったその時代のテクノロジー自体がその後疑問視されることもあるだろう。

簡単な問題ではない。

ちなみに、頭ごなしに「死刑に賛成ですって?信じられない!」とヒステリックに叫び、吊るし上げるのだけは勘弁してほしい。5年前大学寮でアムネスティーに所属する若い3人のドイツ人中流階級白人女性に槍玉に挙げられた記憶が生々しく残っている。
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by uk_alien | 2006-01-19 05:10 | concept