運の悪い奴ら
2009年 03月 19日
「まじかい、新車なのに」と思い、後ろを振り向くと、いかにも頭の悪そうな白人女が運転席に座っている。脇に寄せるようにジェスチャーをし、先に道路脇に停車すると、その女はそのままとんずらしてしまった。
アホだな、私。こういう場合は後の車がつかえようが、そのまま道路のど真ん中で停車して登録番号、名前、住所、電話番号、保険詳細を聞き取らなければいけないのか。
帰ってからリアバンパーとハッチバックドアを見てみると、傷もへこみもない。頭にくるケースだが、世の中いい人ばかりではない。これを教訓としよう、と思って忘れることにした。
さて、先週の土曜。床屋から帰ってきた旦那を見ると、全身に怒気が漂っている。立体駐車場を出るのに列に並んでいた際、「4x4のど阿呆ドライバー」が、彼の前にいた「f'ngブラックビッチ」がリバースしてきたたためパニくり、結構な勢いでリバースしその後ろで停止していた旦那のマイクラに思いっきり突き当たったらしい。マイクラの鼻面はパグ状態と化している。相手の4x4はスペアタイヤカバーに傷がついた程度。
必要な相手の詳細は聴き取ってきたとのことで、早速保険会社にクレームの報告をした。
2日後、保険会社から旦那に連絡が入った。「相手はあなたが後ろから突っ込んだと言っており、あなたの責任だと主張しています。彼の車にダメージはまったくなく、従って保険会社にクレームするつもりはないとのことです」
爆発寸前の圧力釜状態で会社から帰宅した旦那。私たちのポジションをもう少し明確に把握するため、もう一度保険会社に電話をかけてもらい、こういう場合専門家が事故車を点検するのかどうか確認してもらった。保険会社ははっきりは言わないがどうやらそこまではしない様子。ま、マイクラのパグ顔を直す程度なら保険会社にとっては大した負担ではない。専門家を雇うまでもないのだろう。それに、目撃者の詳細もとれていないし、駐車場のCCTVも大抵こういう場合はカメラ位置が悪く役立たずだろうから、おそらくは50-50の責任になるに違いない。被害者である我々は泣き寝入り、210ポンドのExcessを支払い、昨年の事故のクレームに重ねてのクレームでノンクレームプロテクションを失い、次回のプレミアムがどかんと値上がるという状況だろうか。おー、でぃあ。運が悪い。
圧力がまったく抜けない状態の旦那に、彼の会社のベネフィットの一つである法律相談ラインに電話をかけるよう勧めた。保険会社同士の判断が私たちにとって納得のいくものでなかった場合、とれる可能性のあるステップを知っておくのは悪いことではない。
驚いたことに、夜の8時を回っているというのに電話は当直の弁護士に繋がれた。とてもいい感じの女性だったらしい。状況を説明すると、どうやら50-50に落ち着くという線は現実的なものらしく、しかしながら、50-50というのは、「いかなる損害も保険会社同士が50-50で負担する」ということで、つまり4x4の運転手にとってはいくら「自分の車にはダメージがないからクレームは起こさない」と言い張っても本件は否応なしにクレーム扱いになり、従って彼のノンクレームプロテクション/次回のプレミアムに大きく影響することになる。
旦那の声がいきなり明るくなり、スチームがみるみる抜けていくのが手に取るようにわかった。電話をかける前には血管が切れる勢いだった怒りとストレスが、電話を切った後には見違えるようにやわらいでいる。「At least he can't get away with it.」
最悪な事態になってもとりあえずは狂犬にかまれたと思ってあきらめられるレベルにこぎつけた。以前から役にたつのかと懐疑的に捕らえていたこの相談サービス。確かに、いかなる理由であれ社員がストレスのピークにあるとき、カスタマーサービスの訓練を受けた弁護士のヘルプやアドバイスを受けられれば、当人はもとより、回りまわって会社にとってもベネフィットがあるわけだ。ふーん、納得。
それにしても、自分の利益のために他人を犠牲にするのを全くいとわない連中というのは思ったより巷をうようよしているに違いない。
くわばら、くわばら。
私も数ヶ月前に、坂道で下がってきた車に当てられましたよ。
「何故かブレーキを放してしまった」と言っていましたっけ。
狂犬に噛まれたと思うのはいい手かも知れませんね、確かに。
実際、そんな犬の飼い主もそんなですからね。


しかもお二人そろって同時期に。
怒りをいかに早く収めて、早く忘れることが一番、お二人にとっていいんでしょうけど、くやしいですよね。
車の運転、お気をつけください。 とんでもドライバーがうようよしてますからね。

運転はお互いきをつけませうね。