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Prom 37

観客の期待を裏切らない演奏というのは、単純なことなようできわめて難しいに違いない。

そうしたトップクラスのソリストの力量をしっかり発揮して私たちを楽しませてくれたProms 37のJames Ehnes。

ソロがあれだけしっかりしていると、オーケストラにもそれなりの美しさを求めるのは当然だと思うのだが、ホールでは1st and 2nd movementでオーケストラの、特にティンパニとホルン(だと思う)のもたつきとタイミングの悪さがところどころで耳に障った。席の位置のせいだろうか(私の席は正面からかなりずれたGrand Tierだった)。フルートのばらつきにも少しいらだちを覚えた。

それでも2nd movementでは価値が計り知れないという1715年モノのStradivariusが奏でるソロの音のあまりの美しさに涙があふれでた。本当に、本当に美しい音だ。もちろんバイオリニストあってのバイオリンなのだろうが。

3rd movementではなぜかそうしたばらつきがなくなってまとまり、かなりのハイテンポで盛り上がった。このスピードでまったくもたつきを感じさせないソリストの腕に本当に驚かされる。才能のある若い体操選手の美しい床体操の演技か、Swan Laneの32 fouettesを観ているようだった。ほとんどアスレチック。

このコンサートは昨日BBCで生放送されている。

録画しておいたものと昨日の演奏を聴き比べると、いいも悪いもその違いに愕然としてしまう。ライブで感じたオーケストラのタイミングの悪さやばらつきは放送されたものではほとんど感じられない。TVだけを観ていれば「よい演奏だった」という印象に落ち着いたに違いない。ソロのボリュームが上げられ前面に押し出されるせいでオーケストラのblemisesが隠されるせいか、単に全体のバランスがsound engineerを通して修正されるせいか、それとも割と小ぶりのオーケストラで演奏されるBruchのViolin concertoが大きなRoyal Albert Hallにそぐわないのか。それともただ単純に私が座っていた場所が悪かったのだろうか。

その一方で、放送されたものではバイオリンが奏でる美しい音色は十分再現しきれてない。魂にストレートに入り込んでくる経験はそこにはない。私のシステムは弦楽器の演奏の再生にはかなり優れているのだが、所詮Hi Fi - Hi Fideltyといってもhiというだけでtruthfulではないということだ。当たり前といわれれば当たり前なのだが、こういうことは実際自分の耳で比べてみることで真の理解が得られるというものだ。

だとすると、これまでずっと放送を通してしか聴いたことのなく、どうしても好きになれないPaul Lewisの演奏は、もしかしたらライブではかなり違って聴こえるのかもしれない、と思った。
by uk_alien | 2010-08-14 23:58 | music

カメラ小僧のイギリス帰化人。愛機はライカM10-P。はたと思い立って始めた大人ピアノ初心者で目下楽しくて仕方がないピアノ練習をブログに綴る日々 ー London UK


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