人気ブログランキング |

自分の心

帰国後の翌日、会社に出勤して心配していた大勢の同僚から声をかけてもらった。

「What was that like?」ときかれて返答に困り「fear」と答えた。

地震の恐怖、津波の恐怖、余震の恐怖、家族や友人の安否の懸念ともしもの恐怖、そしてガソリン・交通麻痺が生み出す物資の不足とそれにともなう大衆の反応への恐怖。そして放射能漏れとそれがもたらす影響への恐怖。

家族や友人を、そして滞在中に接触のあった様々な人たち - とても親切な食堂のオーナーのご夫婦、笑顔で応対してくれるスーパーのレジのお姉さん、大変な中熱心にお年寄りのケアをしているホームのスタッフの方たち、アルバイトだろうに災害の中せっせと真面目にコンビニでレジを打つ若い女性、非常にプロフェッショナルにきめの細かいサービスをしていた成田のBAのグランドスタッフ - こうした人たちを後に帰国することに強い罪の意識が沈めても沈めても浮かび上がってきた。

それでも、こうして不安で不便な中でも様々な形で日常生活を続けていく人たちを目にすることで、被災された方たちやそうでなくとも不便を強いられている方たちに思いをよせて罪の意識を覚え感情的に不安定な状態に陥ってしまうより、自分の生活を自分なりに続けていくことが大事なのだという強い思いを感じ、自分の精神ケアもしっかりしようと襟を正した。

精神ケアといえば...

地震のあった日の翌日から、私も姉も姪も次々に展開するニュースを目の当たりにして恐怖と不安でテレビの前から動けない状態だった。ふと気づくと、異様な虚脱感が漂い、妙な空腹感を覚え、体が痛い。確かに最初の地震以降、日夜を問わず数時間おきに鳴り渡る警報に疲弊しきっていることは確かなのだが、それ以上に何かがおかしいと思いはじめた。「何のためにテレビを観ているんだろう」と考えたときに自分は「自分の状況は被災者達よりましという罪悪感から彼らの状況を肌で感じ感情を移入する義務感」を感じているんだということと、そしてどこかで「私たちの未来は大丈夫、もう心配はないから安心しなさい」という決してありえないニュースを待っていることに気づいた。だから、外出するのは非常に勇気がいったのだが昼間は父の墓参りに出かけ、家に帰ってもニュースは意識的に見ないように決めた。姉のコレクションからオペラを観たり、夜は三人でボードゲームのScrabbleをしたり。最初は単に逃避的行動かなとも思ったが、とても必要なことなように思えた。

と、友人からメールが入った。(蛇足だが、旅行にはKindle3/3Gを持っていったのだが、これがとても役にたった。)彼が臨床心理士から受け取った災害時の精神ケアの注意点に関するメールをForwardしてくれたのだ。下記はその内容:

1.今こそ自分自身のメンタルケアを。

今はまだ地震直後であり、だれでもアドレナリンが噴出している時です。
こういう時は何かをしたくてたまらなくなりますが、まずはその自分自身の感覚に意識を向けてみましょう。細々意識してみることをトラッキングといいます。自分自身に対するサポートを最初にしてください。私たちが落ち着いているか、不安エネルギーをまき散らしているかによって、様々なことが違ってきます。

2. テレビの視聴には気をつけてください。*特にお子様、感受性の強い老若男女の方々。

身体がだるくなったり、ボーッとしたり、涙が出てきたり、妙な罪悪感が湧いてきたり、不安状態にある自分に気づいたら、即刻テレビを消すか、必要なニュース速報のみが流れてくる全く違う番組にしてください。
テレビで繰り返し流される悲惨な映像は、非常に強い吸引力を持ちます(とかく最近のメディアは人々の不安をあおるのが特徴です)。
人によっては催眠にかけられたようにテレビの前から動けなくなる人もいるでしょう。こうした映像に何度も何度も自分をさらすことは、何の役にも立ちません。
***私たちが生きていく為に必要な情報が得られれば、それだけでいいのです!***
トラウマの渦の引っ張り込む力はとてもとても強力です。サンフランシスコ大地震の時は、繰り返されるメディア報道が人々にもたらすネガティブなインパクトは甚大だったといいます。

3. 今一番に必要なのは、身の安全を確保することです。
避難場所、食べ物、人々が安全かどうかをチェックすることが優先です。

4. そして非常時に最も大切なのは、人とのコミュニケーションです。
人を求めるのは、とてもとても自然なことです。
その時の自分の思いを言葉にして、所属するコミュニティでシェアしたり、身近な人に伝えてみてください。もちろん、手段はメールでも構いません。
「メールに書きながら落ち着いてきました。大丈夫です」とおっしゃる方、多いです。

以上、共感した方は、おともだちに共有してくださいませ。


自分たちが漠然と感じていたことをプロの臨床心理士がきちんと文章にしてくれたような気がし、とても心強く思った。そうか、やっぱりそれでいいんだ、という励ましになった。そしてこのメールをForwardしてくれた友人にとても感謝をした。

事態が展開するにつれ精神ケアに必要な心のもちようも変化してくるに違いない。短い滞在だったが、こうした災害時の精神ケアの重要性を身をもって感じた。
by uk_alien | 2011-03-20 19:08 | concept

カメラ小僧のイギリス帰化人。愛機はライカMモノクローム。はたと思い立って始めた大人ピアノ初心者で目下楽しくて仕方がないピアノ練習と音楽理論の勉強をブログに綴る日々 ー London UK


by uk_alien
プロフィールを見る
更新通知を受け取る