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La fille du régiment

極度に酷い四十肩(フローズンショルダー)とともに暮らして5ヶ月が経った。

フィジオも体操もプライベートの専門コンサルタントによるhydrodilationもt大した効果がない。それでも毎日せっせと腕を動かす。いつかはよくなるだろうと希望をもって。「どこ出身なの?日本かぁ、日本人は多いんだよね、フローズンショルダーが。四十肩とか五十肩とかいうんでしょう?」と陽気にばか高い金額の15分の診察(?)をこなしていくプライベートのコンサルタント。

「80%の人には効果があるんだよね」

で、私はその5人に1人の1人にあたるわけだ。溜息。

この5ヶ月、会社を休んだのは二日だけ。

「そんなにがんばりぬいても誰もメダルはくれないのよ、休みなさい!」とギリシャ人のフィジオに怒られるが、昭和生まれの日本人なんだよ、肩も心も(涙)。

仕事に支障がないように週末は失われた睡眠の回復と休息に費やされるのだが、金曜になるともう痛みと疲労が重なって気を失いそうになる。先週の金曜日は拍車がかかりもうどっぷり悲劇にひたる気分だったので、どうしても1995年のRoyal Opera HouseのLa Traviataが観たくなった。

近くのHMVにだめもとで寄り、期待通りだめだったので一瞬あきらめかけたが、エネルギーを振りしぼってCovent GardenのRoyal Opera Houseショップまで足を運ぶことにした。人気商品なんだから在庫は山と積んでいるにちがいない...と思いきや、ない。お店の人に頼んでストックルームを見てもらったが...やはりない。ついてないなぁ。

映画Notting Hillの本屋の店員'Martin'を思い起こさせるこの店員が「注文もできますよ」という。「うーん、今晩みたかったんですよ。そういう気分なので」というと「そんなに早くは取り寄せられないなぁ」と笑う。「いいです。なんか別に観たいものがあるか探して見ますから。ありがとう」といって陳列棚にもどった。

どうしよっかなぁ~...とだらだらだらだらうだうだうだうだしていると、'Martin'が「どんなのが観たいか決めてるの?」と寄ってきた。Mozartはだめ?このプロダクション、すごくいいよとROHのLe Nozze di Figaroを指す。「知ってる、観た、ものすごくよかったよ、それ」「じゃあこれは?」とDomiongoのIl Trovatoreを勧める。「うん、このCD版持ってる。すごくいいと思うけど今日はそういう気分じゃなくって女性の声を聴きたい気分なんだ」

「じゃあこれもだめだね」と彼は笑いながらDomingoのMacbethを指す。「ふふふ、だめ。それすごく質が高いって批評を読んだけど、今日はそういう気分じゃないんだ。このIl barbiere di Sivigliaにしようかなと思っていたの。このTenorのFlorezのコンサートにこの前行って、すごくよかったし」

それもいいけど、こっちの方が絶対いいと思うな。と彼がDonizettiのLa fille du régimentを取り出す。例のFlorezの9 high C’s、2007年ROHのプロダクションだ。「ソプラノのNatalie Dessayもすごくいいから」

うーん、よさそう。

Renee FlemingのLa Traviata(Los Angels Opera)には控えめにしかしきっぱり首を振り、彼はJonas KaufmanのCarmen(ROH)を勧める。とてもよさそうなプロダクションだと思っていたしKaufmanのRoyal Albert Hallの今年のコンサートは後ろ髪をひかれつつきっぱりあきらめていたので、それにもぐっと惹かれた。

ということでこのCarmenとLa Fille du Régimentに決める。

彼は2週間後のRigolettoを予約してあるそうで初めて観るのだそうだ。私はひとしきりプロダクションへの賞賛の意を表し、今回Duca役のVittorioはしごくチャーミングと意見の一致を見た。私が見たときはDmitri HvorostovskyがRigoletto役でね、歌唱はまさにすばらしかったけど演技がでくのぼうだったんだよねと嘆くと'Martin'が「彼の演技最悪だよね」と声を潜めて同意する。

てなわけで、なんだかんだとオペラ話でもりあがって、意外な場所で意外に楽しい時間をすごした。

「DVDよくなかったら明日店に来てパンチしてね」
「ふふふ、私絶対気に入ると思うな。2週間後のRigoletto楽しんでね」

ちなみに。La Fille du Régiment、ものすごくいい。まさにOpera Comiqueの真髄という感じ。舞台のセットは写真やyoutubeで見ていた限りではあまりぴんとこなかったのだが、オペラ全体を通して見て、非常によくできたプロダクションだと思った。Natalie Dessayの美しく力強くしかもコントロールがしっかり効いたcoloraturaはGruberová をほうふつさせ、まさに鳥肌が立つ。そして彼女の存在感あふれる演技力にはFlorezのマダムキラーチャームもまったく薄れてしまうほどだ。
by uk_alien | 2012-03-27 05:51 | music

カメラ小僧のイギリス帰化人。愛機はライカM10-P。はたと思い立って始めた大人ピアノ初心者で目下楽しくて仕方がないピアノ練習をブログに綴る日々 ー London UK


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