前進なのか後退なのか

イギリスでは家庭内暴力発生の通報(緊急の場合は999)を受けると、警察が介入する。起訴が決まると、下級判事裁判所(Magistrates Court)または刑事裁判所(Crown Court)にて審理され、刑は条件付での釈放から懲役刑までが適用される。接近禁止命令と退去命令しかなく、それに違反した場合のみ罰金刑が課せられる日本よりも厳しい。

しかし、イングランド及びウェールズにおける裁判官達に対し判決のガイドラインを作成する量刑基準審議会(Sentencing guidelines Council)は新しいガイドラインへの提案として、これをゆるめ、被告が純粋な深い反省の態度(genuine signs of remorse)を示した場合、実刑判決ではなく、コミュニティー・オーダーまたは執行猶予付判決にする、としている。

これは、はっきりいって、情状酌量の余地を慎重に考慮する、というのではなく、裁判官の前で「ごめんね...」とうなだれることで受けるはずの実刑を受けなくてすむようになるということだ。

コミュニティー・オーダーでは犯罪の内容やリスクによって犯罪者は保護観察を担当するプロベーション・サービスで運営されるプログラムに参加する。この場合はIntegrated Domestic Abuse Programme。12~13週間のこのプログラムのコースを終了したワイフ・ビーターの再犯率は3人に1人。実刑/罰金刑を受けた人間の再犯率は3人に2人。

新しい提案が通ると、この再犯率の高い後者の連中が前者に加わるというわけだ。

私はこの再犯率33%と66%の違いはプログラムの効果ではなく、究極的に犯人がどれだけ暴力的な人間かどうかなのではと疑う。彼らにしてみれば茶番を演じることで実刑を受けずに数ヶ月のコースに参加することで済むのだ。ラッキー。

刑務所はもうほぼ満杯のキャパシティーだという。刑務所を増やすよりプロベーション・サービスを使ったほうが安いのだろう。「本当にそっちへ行くのか、イギリス...」とタメイキをついてしまった。

ドメスティック・バイオレンスの一番大きなチャリティーはRefuge
ヘルプラインは0808 2000 247

ちなみに1999年にカナダの日本総領事が妻への暴力で逮捕された際に、「単なる夫婦げんかを暴力と見るかどうかは、日本とカナダの文化の違い。人騒ぎするようなことではない」と説明したそうだ。あきれてものがいえない。妻は告訴せず彼は釈放されている。
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Commented by ihoko at 2006-04-12 22:19 x
相変わらず面白くて興味深い視点の記事・・ですね。
イタリアにも似たような感じのものがありますが・・イタリアの場合はあくまでキリスト教カトリックがガンになっていて・・罪を一度も犯したことのない、嘘をついたことのない人間だけ、石つぶてを持ち、この罪人を責めよ。そうでない人間は・・許してやれ!精神があって・・特に青少年の犯罪は例え殺人であっても3,4年で出てこられたりします。そうそう・・先日イタリアであった18ヶ月の幼児を誘拐殺害した犯人は強姦罪で、保護観察つきだったのです。どうして・・そういう人を野放しにするかね!と私は不思議です。
Commented by uk_alien at 2006-04-12 22:40
■ ihokoさん、幼児強姦罪を犯して保護観察...それは...それって...ひどすぎる。幼児の強姦って、女児の場合、行為の結果で未成熟な性器がずたずたに裂かれてしまうそうです。その後にリコンストラクション手術をして将来使い物になるかどうかというレベルなのだそうです。ひどすぎる....。ihokoさんの記事を拝見するようになって、イタリアは果たして「先進国」(最近は自分の中で何が「先進国」なのかわからなくなってきましたが)なのだろうかと疑問に思うことが増えました。ただ、イギリスでも未成年が犯人の場合刑は非常に軽いようです。
Commented by ihoko at 2006-04-12 23:03 x
uk_alienさん
イタリアは先進国じゃないですよ。絶対違う。主人も主人の父も良くそういいます。私たちは南アメリカの友人が多いのですが、彼らも良く言ってました。イタリアにだけは自分達の国のことを発展途上国といって欲しくないよな!と・・イタリアはアフリカです。
Commented by isgurauk at 2006-04-13 00:56
カナダの日本総領事の件、初めて知りました。言い逃れ方が、馬鹿らしいほど日本の亭主関白の悪い例みたいですが、いかにもこういう社会的立場の(一応)高いと思われる人のいいそうなことですね。日本はしょせんこういうレベルなんですね、、、 立ち上がれない妻、サポートもなし、闇に葬られるみたいな。


Commented at 2006-04-13 01:37 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by cy11 at 2006-04-13 03:02 x
虐待癖がある人は、治すの難しいですよね。私の父も近所で有名な位私を叩いていましたし。これって、今なら大変ですよね!笑

イギリスの友達でも旦那さんに暴力をよくふられていましたが、何故我慢するのか私には、分からなかった・・・。
妊娠時に蹴られ、あざまで出来て、GPに行って相談を受けたらしいですが・・・結局出る所にも出ずじまい。
この処置もどうか思うけれど、こうやって浮き上がらないケースも多いでしょうね・・
Commented by 3ぱいんと at 2006-04-13 05:03 x
旦那にしょっちゅう“でこピン”してます。
やっぱりこれもDV・・・!?

素晴らしい記事にまともなコメントができない私をお許しください。
Commented by leira-london at 2006-04-13 20:41 x
あきらかに後退ですよねぇ。
他国にお金を出すのなら、刑務所ふやせるでしょぉ?
ドメスティックバイオレンスがますます増加しそう。
Commented by uk_alien at 2006-04-14 02:36
■ cy11さん、打たれ強いタイプそうですよね~。イギリスだったら刑務所ものですよ。そういえば、じゃあ、子どもをたたいたら刑務所にいくけど、妻だったらいいってことね、このイギリスの法律。変!!
DVは結構あるみたいですよね。私の母も父によく怒鳴られていましたっけ。もう、すごい言い方とボリュームで。それを見ていた私達姉妹は「ぜったいに男に踏みにじられる人生は送らない」と誓いました 笑。
Commented by uk_alien at 2006-04-14 02:40
■ でこピンは可哀想ですよ、3ぱいんとさん。でもうちもたまに「きーっ」とかいってお互いはたこうとする、おかま喧嘩をします。
何をおっしゃる、私はモスリムのぺらぺらぺらぺら...という記事といい、Are you foreign?の記事といい、3ぱいんとさんの記事にはいつも感心と爆笑のBuy One Get One Free状態です。
Commented by uk_alien at 2006-04-14 02:43
■ leira-londonさん、刑務所足りないなら作ってよ~、お金あるんでしょう??という気分です。あ、先日はleira-londonさんのブログでゴードン・ブラウンの記事を読んで爆発してしまいました。すみません...。
Commented by uk_alien at 2006-04-14 02:52
■ isugra ukさん、カナダの件、ショッキングでしたよ。あまり日本の男性とかかわる機会がないので、もしこれが当たり前ならかなりまずいですよね...。若い世代になるにつれ価値観がかなり昔とは違ってきているようなので、こうした思い込みを若い世代が引き摺らないことを祈ります。
Commented by uk_alien at 2006-04-14 03:01
■ ihokoさん、イタリアは陽気さ、気候、ファッション、食文化と、だいぶイメージが出来上がっていますよね。でも実際住むとなったら全く違うんでしょうね。
「フランスに移住?」なんて夢見たこともありましたが、旦那と話し合って、住んだら住んだで旅行のときとはまったく違う現実がある、それをおしてまで自分達は住みたいかと自問したところ、そこまでのパッションとファンドと言語能力はないと結論づけました。宝くじあたったら絶対プロバンスにセカンドハウス買いますけど。
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by uk_alien | 2006-04-12 21:19 | just a thought | Comments(13)

カメラ小僧のイギリス帰化人。愛機はライカMモノクローム。はたと思い立って始めた大人ピアノ初心者で目下楽しくて仕方がないピアノ練習と音楽理論の勉強をブログに綴る日々 ー London UK


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