健康のゆくえ

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昨日の労働党のイベントで「国民は政府に頼らず自分で健康管理をすべき」とのたまったトーニー・ブレアー。私もまったくその通りだと思う。オーウェルのビッグ・ブラザーかみのもんたでも呼んでこない限り、お上が国民の健康管理なんてできるわきゃない。

肥満、過度の飲酒と喫煙が蔓延するイギリス。医療サービスを無料で提供するという崇高な理念を掲げるNHSの将来は暗い。

恣意的ではあるが、私は健康管理が出来ない輩が金銭管理を出来るとは思っていない。従って、そうした人々が年老いたとき、彼らの多くが医療・福祉サービスにおんぶに抱っこという状況になるとにらむ。ない袖は振れないのだからカウンシルも抱っこせざるをえない。

一方、健康に気をつけ、勤労に励み、貯蓄と家のローンの支払いに生涯を費やした人々が老後のケアを必要とする際には、文字通り全額自費でまかなうことが強いられる。福祉介護の提供は収入および貯蓄と不動産の査定によるから、一定の額を超える貯蓄と不動産を所有している限り、サービスは提供されず、自腹を切リ続けることが要求される。

更に、自費でまかなっている人たちと、同じケアで社会福祉を受けている人達を比較すると、前者にはより高い金額がホームから請求されている。見方によれば、小額しか支払うことの出来ない社会福祉の不足分を自費組が支払っているともとれる。

自費で支払いきれなくなれば福祉に頼ることになるが、その時点でまだ家を所有していれば、この家を売り飛ばすことがカウンシルから要求される。国に頼らず何とか自力でやってきた人たちは、年取って目を凝らして初めて自分達の脛に国がしゃぶりついてきたのが見える、という図式。しかもコイツ、年老いて筋肉を失った細い脛にしゃぶりついて離れない。脛の持ち主が家を売って、さらに、その見入りが尽きるまでは。

そんな社会で、このイギリス国民が「明るい老後のために今から健康に気をつけよう」なんて殊勝なことを考えるとでも思っているのだろうか、この首相は。
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Commented by 琴乃葉かすみ at 2006-07-27 15:19 x
uk_alien さん、さっそく遊びに来ました。私もイギリスの NHS にはあまりいい印象がありません。かかりつけの医者にあいたくても三週間先だと言われて「そんなんじゃぁ、それまでにとっくに治ってるか死んでるかのどちらかだろーが!」と。結局、かかりつけの医者ではなく、そのさーじぇりーにいるいつもちがう緊急アポ担当医にばかり会うことになってしまって。ところで、通訳コースを終了なさったんですね。がんばってますね!私も元気をもらいました!
Commented by leira-london at 2006-07-27 17:50 x
私もこれ注目してたんですよ。自分のブログでさんざん言ってきたことなんで、ブログにしなかったんですけど。

当たり前のことが出来ない人が恩恵を受けて、そうでない人が馬鹿を見るシステム。

怖いですよ、正直。
Commented by maxey at 2006-07-27 18:11 x
前に新聞で見た家族は、『子沢山+夫健康なのに無職』でカウンシルから大きい家を与えられ、収入は週に2000ポンドでした。そりゃ、働かない方がいいに決まってますよね。まじめな人がバカをみる状況、日本以上ですね。

自分達以外の文化を受け入れたくないイギリス人に向かって『健康に気をつけよう!』は酷ですよね・・・。それって『食文化、変えろ』と言ってるのとほぼ等しいですよ・・・(笑)
Commented by 3ぱいんと at 2006-07-27 18:15 x
仕事をしているとすずめの涙ほどの給料から差し引かれるナショナルインシュアランスは決して安くないですよね。働いている人間にとっては無料では全くないNHS。
かといってNHSが全面廃止されれば、今度はアメリカのようになってしまうのでしょう。
どっちもどっちですよね。
「国民は政府に頼らず自分で健康管理をすべき」
そんな当たり前のことをこれまで分からせるどころか、学校給食などで国民の意識をどんどん悪い方向に持っていっておいて、今更そんな事いっても遅くはないですかねぇ。
Educate という言葉を用いることの好きな彼等、また国民をEducate するために、という大義名分で税金が上がるのかしら。
そして摩訶不思議なアイデアを出して実行し結果はもちろん現れない、という悪循環。
あほらしいですね。
Commented by uk_alien at 2006-07-27 19:37
■ かすみさん、こんにちは!NHSに関しては皆同じことを経験しているようですよね。ちょっとタメイキです。かすみさんのブログ、とても励みになります。また遊びに行きますね!
Commented by uk_alien at 2006-07-27 19:44
■ leira-londonさん、これって根強い階級社会に対する極端な否定反応なのかなと思います。確かにイギリスの階級って想像を絶するものがありますし。でもこの上流階級や成金スーパーリッチまでいかない中間層からちょい下層にかけてが、非常に損してる社会ですよね~。で、我家もそこにすっぽり入る。
Commented by uk_alien at 2006-07-27 19:49
■ maxeyさん、「食文化を変えろ!」(笑)
確かにそういっているのと同じですよね。でも「売る自由」の権利を主張するフィッシュアンドチップス協会から訴えられちゃいますよね。ヒューマン・ライツだー!みたく。
Commented by uk_alien at 2006-07-27 20:05
■ 3ぱいんとさん、すごいインサイト。
>Educate という言葉を用いることの好きな彼等、また国民をEducate するために、という大義名分で税金が上がるのかしら。そして摩訶不思議なアイデアを出して実行し結果はもちろん現れない、という悪循環。
もう、首をぶんぶん縦に振ってしまう。効果のない「摩訶不思議なアイディア」には赤波線引いちゃう!

アメリカのようになるのはよしとしません。でも急増する移民人口、はびこる成人病と高齢化社会といった急速な社会の変化に、この崇高な理想がそこかしこでほころびていく、そしてそうしたほころびを表面的に繕うために犠牲になるのが「税金を払える人、払ってきた人」というのがどうしても納得できないんです。特に払ってきた人への仕打ちは二重苦。私がイギリスで生まれ育ってずっと税金を納めてきたとしたらもう噴火していると思う。仕事をして、なんとか自力でやって税金を払ってきて、年取って人の助けが必要になったときに、あなたは貯金や家があるからvulnerableではない、従って福祉の援助は必要ない」という図式は、やっぱり今の私にはまだ納得できない。
Commented by isgurauk at 2006-07-27 23:22
うちの夫から聞いた話で、呆れてしまったのは、以前この国で塩の摂取を減らしましょうというキャンペーンをしようとした時に、猛反対が起きてその施行に何年もかかったというもの。塩を摂取する自由を奪われた、お国に個人の嗜好をとやかく言われたくない=個人の権利侵害という図式になったからだと、、、、好んで塩を摂取しすぎることで起きる害により苦しむことになるのは個人の勝手だが、こういうことを言う人に限って、病気になれば声高に政府に医療施設の不足を批判する、、、

自分のベネフィットの為にアドバイスされたことさえも、こんな噛み付き方するのは度を越してるし、何にでも人権侵害を結びつけるのはこの国のいいところであもあるんでしょうが、悪いところでもあると思います。

政府に全てを面倒を見てもらうことは当然のことであり、「自己管理」ということが、どんな問題においてもほんとに重い課題として圧し掛かってる国ですよね。センシブルでないというか。

Commented by uk_alien at 2006-07-28 04:49
■ isguraukさん、塩を摂取する権利!個人の権利侵害!私にとっては純粋に関心してしまうロジックですね。
>こういうことを言う人に限って、病気になれば声高に政府に医療施設の不足を批判する
というのは言いえて妙だと思いますよ。ちょっと角度が違いますがアニマル・アクティヴィスト達がいざ病気になったときにアニマル・テストしたドラッグを避け通すのか、という疑問を思い出します。
この国の「自己責任」「自己管理」というコンセプトも非常に興味深いところです。ものすごく個人主義が徹底しているのに妙にそういう点を政府にゆだねるような、そして国側にもナニー・ステイト的な、ソーシャリスト的な面がありますよね。
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by uk_alien | 2006-07-27 00:53 | venting | Comments(10)

カメラ小僧のイギリス帰化人。愛機はライカMモノクローム。はたと思い立って始めた大人ピアノ初心者で目下楽しくて仕方がないピアノ練習と音楽理論の勉強をブログに綴る日々 ー London UK


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