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切れたピアノの弦と調律師

待ちに待ったピアノの調律師さんが来てくれた。

この人は数年前ヤマハのピアノの譜面台が壊れた際、たまたまその時契約していたということで修理に派遣されて来た人。

ピアノの買いかえをきっかけに、仕事が遅く何かにつけては余計にチャージしてくる古狸のギリシャ人チューナーをクビにし、研修経験が豊富で真摯なこの青年に以後調律をお願いすることにした。

最近は頻繁に仕事が入っているとのことで、すぐに来てもらえた数年前とは違い、かなりフレキシブルな予約を入れても1ヶ月以上待たなければいけなくなってしまった昨今。だから来てくれて尚更嬉しい。

さて、調律の最中に、はたとピアノの音が止まり彼が珍しく「Hello?」と声をかけてくる。

「調律中にピアノの弦が切れました。新しいピアノですし滅多に切れないポイントで切れたのでおかしいと思ってよく見てみたら、弦にすでにキズがついています。ほら、ここ。恐らく工場で技術士が相応しくない道具を使ったのかもしれません。弦のスペアは持ち歩いているのでご心配なく。取り替える料金もチャージしませんので。ただいつもより20分くらい余計に時間がかかります」

といつもながらに超冷静に淡々と説明してくれる。

「ショップに苦情を言った方がいいんでしょうか」

と聞くと、

「うーん、ショップに言っても弦を取り替えるだけですから同じことです」

とのこと。

新しい弦は調律してもテンションが変化して翌日には音が狂ってしまうため、キーを叩いてもハンマーが当たらないように細工するらしい。直に影響を受ける二つのキーに関しては他のキーと比べると音量がやや小さくなるのだそうだ。目下最大のテンションがかけられたこの新しい弦を今後の調律ごとに辛抱強く調整していかなければならない。

調律師さんに心ばかり多めに支払った後、ピアノに座って弾いてみた。全体を通してウナ・コーダペダルを常に踏んでいるような柔らかい音で、問題の2つのキーは更にソフトな音量になってしまっている。

このピアノの音色が好きなだけに、これから数年この状態なのかと思うとちょっと悲しくなってしまった。

それと同時に、この調律師さんとは今後この問題が解決するまでは長い付き合いになることだし、以前に彼の経歴にはざっと目を通して信用はしているけれど念のため再度チェックしておこう、と思いネットで調べてみた。

物静かで無駄話は滅多にしないこの調律師さん。彼がある特定のピアノメーカーの調律を専門にしているのは何となく知っていたけれど、ロンドンのメジャーなコンサートホールでこのメーカーのピアノが使用される際にはコンサート準備を手がけるのだそうだ。すごいなぁ。特にこのメーカーのピアノを常設している某コンサートホールのあのピアノ...うっそ、あそこのあのピアノを調律しているの?と顎が落ちる。ちなみに通りの名前で観光名所になっているロンドンのレコーディングスタジオのピアノの調律も担当しているのだそうだ。だめ押しで驚いたのは昨年から世界的に有名な某若手ロシアピアニストのロンドン公演のピアノ整備と調律を手がけていること。

え゛〜、そんなことひとっことも言わなかったじゃん、ひとっことも。一体何でこんなちっこいピアノの、私なんかのピアノの調律しているんだろう?

...そういうこともあるのかもしれない。

とりあえず。切れた弦に関しては不運ではあるにせよ、大層信頼できる人が面倒を見てくれていると思って間違いなさそうだ。

by uk_alien | 2018-12-05 07:35 | Piano ピアノ

カメラ小僧のイギリス帰化人。愛機はライカMモノクローム。はたと思い立って始めた大人ピアノ初心者で目下楽しくて仕方がないピアノ練習と音楽理論の勉強をブログに綴る日々 ー London UK


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