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明るい食生活

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大抵のイギリス人は食べ物に関し保守的だ。

ロンドンで働くサラリーマン・ウーマンたちは積極的に各国料理レストランを楽しみ、味噌や蕎麦などの素材を買い込んで自宅で和食作りに挑戦する人達もいる。

しかし、労働者階級にとって、また、中流階級でもロンドンを少し離れただけで、そうした異国の食べ物は問題外となるようだ。日本の頑固親父が「洋食なんざしゃれたもんはオレの口にあわね~」というのと同じだろう。

問題はその「口にあう」保守的なものは何かという点にある。「焼きたてのししゃもと、さっと火であぶった黒はんぺんにちょろっと醤油をたらして酒を飲む」のが最高と考える日本のおやじを、「フライドポテトかポテトチップスでビールを飲む」イギリス人のおやじと比べると、いかに彼が栄養価の高い、しかもカロリーの低いものを食べていることがわかる。

都市を中心に徐々に変化してきているとはいえ、イギリスの典型的家庭料理といえば、冷凍のぶっといフライドポテトとこれまた冷凍のパン粉にくるまった白身魚のフライとこれまた冷凍のグリーンピースがどっかり皿にのっかったもの。これが文字通り毎日繰り返されている家庭も少なくないという。朝食はチョコレート味のシリアル、ランチは異様な色の出来合いの食べ物と甘い炭酸飲料とポテトチップスかお金があればマクドナルド、おやつはチョコレートバーという子供達は勿論野菜なんか食べるわけがない。

イギリス人と接するようになってすぐ耳についたのが、彼らの発する「い゛~」という音。胸が悪くなるようなものに対して発する音だが、主に食べ物系に関しこの音を発する。こういう感情をあからさまに表さない文化を背景とする私にとってはちょっと子供じみて見える行為だ。

例えば、
①シーフードは食べない30代友人は海老だけはむいてあれば食べるが、タパス料理なんかで頭付きで出てきたら「い゛~」を連発。
②マクビティのチョコレートビスケットだけで生きてるようなポッシュなご家庭出身の40代友人は日本食の話をきいただけで「い゛~」。においでもはらうように片手が宙を泳ぐ。
②友人が教える南ロンドンの小学校。8割近くがカリブ系の黒人の5歳児クラス。一日だけ招かれて日本文化についてのカルチャー・クラスを終えた後、海苔巻きや味噌汁を披露。びびりながらも純粋に興味をもって少しでも試そうとする黒人、インド・パキスタン系の子供達と対照をなしたのが白人の子供達。ほとんどは「い゛~」といって眉をしかめ手をつけない。「私はそれは食べないわ」とはっきりおっしゃってくれた子もいた。

実際にあった話。こないだのクリスマスに不幸にして20歳で亡くなったイギリス人男性。彼は物心ついてこのかた、フライドポテトと白パン、そしてたまのベークドビーンズ(煮た大豆をトマトケチャップを薄めたような液体につけて売っている多くのイギリス人男性の心の友)しか口にせず、医者や家族の意見も無視。しまいには抵抗力・回復力が徹底的に弱まり、3本の虫歯を抜かなければ感染死、抜けば出血死という状況に自らを追い込み、後者を選んで出血多量で臨終したという。

昨日旦那にこの超偏食青年の記事を見せたところ、彼は「職場の部下、Hに見せる」といって切り取った。Hは20歳の女性。野菜は一切口にせず、好物はマクドナルドのチキンバーガー、でも「バンズとチキンだけにして。ソースとレタスは一切抜いて」と注文する。

貧乏だった私の家では冷凍食品やレトルト食品は一切テーブルにはのらなかった。旬の素材より割高だったのと、母親が高齢すぎてそういう新しいものを使おうという頭は一切なかったからだろう。結果として安い魚や旬の野菜を使った安っぽい百姓料理が私の「お袋の味」となった。子供時代の経験というのは恐ろしいもので、私は今でもほとんど素材からしか作らず、この母親の安っぽい百姓料理が「日々の食事たるもの」と信じ込んでいる。私も所詮食に関し「保守的」なのだ。ししゃもとはんぺんで酒を飲む日本の頑固親父やチップスでビールをかっくらうイギリス人親父と同じように。

でも同じ「保守的」でもこの食べてるものの違いは大きい。文字通り致命的に大きい。
by uk_alien | 2006-02-01 20:42 | concept

カメラ小僧のイギリス帰化人。愛機はライカMモノクローム。はたと思い立って始めた大人ピアノ初心者で目下楽しくて仕方がないピアノ練習と音楽理論の勉強をブログに綴る日々 ー London UK


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