MDV事情

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MDVはMaison de Villageの略。不動産の記述に使われる。

南仏はこの中世の面影を残す石造りのmaison de villageが密集して成り立つ村が点在している。色あせた蜂蜜色の壁、古くなってペンキのはげかけているシャッター、そして微妙な色合いの屋根瓦。一体どの部分がどちらの家のものなのか、見分けるのがとても難しい。

「本当に信じられないくらいに狭いのよ。こんなんで申し訳ないわ」と言いながらオーナーが家の中を見せてくれた。確かに狭い。手を伸ばせば全てに手が届くキッチンに妙に懐かしさを覚えた。

こうした、東京の下町を思わせるような場所では、たった二週間の滞在の間でも、近隣のご家庭事情が筒抜けとなる。

5軒長屋の一番南側は在仏歴の長い骨董屋のオーナーのイギリス婦人。現地生まれの二人の娘の妹の方はフリル付で生まれてきたんじゃないかと思えるくらいにガーリーな一方、アイルランドからボーイフレンドを連れてヒッチハイクで帰ってきた姉の方は鼻ピアスの元気ヒッピー。「いいも悪いもフランスではイギリス人、英語圏ではフランス人なの。ここは夏はいいけど、その他の季節は退屈ね。それに、多くは語らないけど...人が...ね。私たちはもっと小さな村に住んだことがあるから、イングリッシュというレッテルがつきまとって、それはそれはうざったかったわ」と語る。父親(イギリス人)の存在は感じられず。

私たちを挟んだその隣は、50代くらいの一人暮らしの地元フレンチ婦人。平日は毎朝7時に起きて出勤し、夕方6時半に「真っ白な灰」の廃人となって帰宅する。何で身を立てているのかは謎だが、帰宅後ものすごいボリュームでチェックする留守電には毎日必ずいくつかのメッセージが入っているので孤独ではないらしい。週末には瓜二つの娘さんと人恋しげな7歳くらいの男の子が泊まりに来ていたが、これまたご主人の姿は見えず。滅多に男性の姿が見えないことから、ふと、この村は外人と未亡人/離婚女性で成り立っているんじゃないかと疑った。

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その隣に住むゲイカップルは、この長屋の裏庭全てを占領するコートヤードと、それを挟んで反対側に立つ建物全てを所有している。(骨董屋のおかみ、私たちのコテッジ、そして廃人のフレンチレディーの家には庭がない。)噂によると、彼らは家や庭をデコレートしては気を変えてリデコレートするということを繰り返しているらしい。その割には「何をやってもセンスが欠落している」らしく、現在はニースの二流フラットあたりに見られそうな、中途半端にモダンなデッキングと黒く塗られた鉄筋ワークでこのコートヤードを台無しにしている。目下この狭いスペースにスイミングプールを建設中。春からこの6月頭まで続いた最悪の天気の後、一気に建設の遅れを取り戻そうと、朝から溶接のためのトーチのグオーという音が響き渡る。「裏庭にドラゴンがいるよ」といったら旦那が笑った。

一番端の家はガーデンデザイナーが住む。彼らの庭はコートヤードの反対側に位置するゲイカップルの建物の、それまた裏側に位置する。塀が高くて今ひとつ全てを覗き見できないのだが...庭の一角に日本の竹林に見られそうなぶっとい竹がうっそうと茂っており、これがまた、石を積み重ねて出来ている塀になんとも似合わず、とても趣味が悪い。

悪天候で遅れたリノベーション/リストレーションワークはゲイカップルのプールにとどまらず。ピークシーズンの7月8月に向けて、フランス中のビルダーが一気にリュベロンに集結したようだ。3階建ての石造りの家たちが車一台分の細い道の両脇に隙間なく連なるこの村では、石を切る音からドラゴンの炎の音まで全ての音が反響し合って、まるで村全体が建設現場のよう。

やかましいイワツバメのおかげでほぼ日の出と同時に起こされる。コテッジでゆっくり...というホリデーはもはやありえないことを悟り、私達はそそくさと観光に出かけた。
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by uk_alien | 2008-07-01 01:06 | holiday | Comments(0)

カメラ小僧のイギリス帰化人。愛機はライカMモノクローム。はたと思い立って始めた大人ピアノ初心者で目下楽しくて仕方がないピアノ練習と音楽理論の勉強をブログに綴る日々 ー London UK


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