甘美な誘惑

ホリデーで素敵な場所に行くとどうしても不動産の値段をチェックしてしまう、というのは人の常。それに応えるように不動産屋はいたるところにある。もしあなたが「いい場所だ」と思うのであれば、他の多くの人も同じように思うわけで、不動産の値段はしっかりそれを反映する。

リュベロンの不動産は高い。maison de villageなぞ、1㎡の床面積あたりの値段で考えると目が飛び出てしまう。ぽん。それでも、ホリデーホームを沢山管理するおじさんいわく、かのクレジットクランチの波はしっかりここにも押し寄せているのだそうだ。「あと6ヶ月待てば、リュベロンの不動産の値段はどかんと落ちるよ」

うーん、その「どかん」がどれほどであっても、もとの値段が値段だからなあ...。

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不景気、といってもお金はあるところにはある。ある村のてっぺんに位置するシャトーが最近売れたそうだ。このシャトー、丘にはりつくように密集する家々に向かって畏敬を放ちつつ、リュベロンの谷一帯を見下ろす。その眺めといったら...。はぁ...。

一体いくらなんだろう。想像もつかない。そこまでのレベルになると、平民は夢に見る気にさえもならない。入居前のファインチューニングのビルディングワークが進むシャトーを後に下々の世界へ下る。と、シャトーの南側すぐ下で赴き深いmaison de villageが一軒売りに出ていた。歩行者用の丸石が敷き詰められた細い道に建つその家は、家幅も広く、道をはさんだところにあるテラスは眺めがよく、夕方遅くまで陽がさしてとても心地よさそうだ。

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私達はこの時点で既に将来この地域に不動産を購入するとしてもmaison de villageは避けよう、と確信しつつあった。実は今回借りたコテッジは、前回訪れたときに「買うならここだな」と思った家(廃人フレンチ婦人宅 - 昨年から売りに出ているが高くて買い手がみつからない)の隣ということで「実地体験(?)」を兼ねて選んでいた。しかし、紙の上で理想と思えたこの売家は思ったよりとても狭いつくりだということがわかり、また、庭の代わりになると思った「眺めのよいルーフテラス」はノンタウニーの私達にとっては決して庭の代替にはならないことを確信するに至っていた。その上、ヴィレッジライフは想像していたよりも、とても、とても、close。いいも悪いもエキスパットコミュニティーが確立しているおかげで、ゴシップウェブを逃れることはまず不可能といっても過言ではない。

それでも旦那と二人でこのシャトーの足元の家に心が揺れた。こうした不動産の魅力というのはとても甘美で危険なものだ。早速、契約されている不動産屋を訪ね、高い敷居をまたぎ、詳細を手に入れた。

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うう、思ったほど高値でもない。セントラルヒーティングを入れなければいけないのと、家中の古めかしいデコをやり直さなければならないからだろう。このプロパティー、外から見たテラスの他に、二つのテラスがある。一つはキッチンのすぐ隣、北側に位置する小さめのコートヤード、もう一つはルーフテラス。ここからの眺めの写真がプロパティーの詳細に掲載されていた。「上のシャトーに引けをとらない眺めですよ」と不動産屋はいう。うう...その通りだ。すごい眺め。

コテッジに帰り、もしファイナンシングをしてホリデーホームとして貸したら...という計算を行った。うーん、4週間/年のホリデーコストと比べると、しゃれにならないくらい高価だ。最終的には不動産の支払いが終わって自分のものになるとはいえ、ブッキング状況=収入の懸念や不動産のメインテナンス、モーゲッジ返済に負われるUK側での生活のクオリティーなどを考え合わせると、今現在手元に投資価値を見込む必要のないキャッシュがどかんとあるのでもないかぎり、魅力的なオプションでは決してない。ホリデーホームとして年のうち7ヶ月をレントできたとしてもだ。

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長い旅路を終えてホリデーから帰宅した。

表側の庭ではバラが咲き誇り、モックオレンジの香りが一面に漂っている。玄関のドアを開けると、室内のオープンスペースが目の前にわっと広がり、奥のコンサーバトリーから、ダイニングルームの窓から、西側のキッチンの窓から光があふれこんでいる。あれ?家ってこんなに明るく広かったっけ?

コンサーバトリーのフレンチドアを開け放ち、蚤の市で買ってはるばる運んできたテーブルと椅子をテラスに出して、フリーザーで一気に冷やしたロゼをグラスに注いだ。自分たちでデザイン/ランドスケープし、自分たちで選んだ植物を自分たちが植えた裏庭を見ながらゆったりくつろぎ、プライベートな空間を存分に味わう。様々な色のイングリッシュローズたちが盛りの美しさを競い合っている。

こうしてホリデーは終わってしまったけれど、2週間のビレッジ生活の「怪我の功名」か、その締めくくりには、持っていないものよりも、持っているものに心から祝杯したのだった。
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Commented by ihoko at 2008-07-06 15:15 x
家の良人の実家が海の家を所有しているんですが、自分達が行かない時期を人に貸すって・・思うほど簡単じゃないですよ。いっそ1年間貸すか?貸さないか?の2者選択。おまけに、家って維持費がかかるし、離れた場所にあると、管理会社に頼んで見てもらっても色々と出てくるし・・。
それとね。余程条件が良くないと(要はお金をふんだんに出せる状況でないと・・といいながら、何だこれは?の物件で、この値段?のすごい金額なのですけれど・・)別荘なのか?長屋なのか?見分けがつかない団子状態。南仏もイタリアなども夏は誰でもウェルカム状態の、開け放し(夕食は9時以降、音楽が鳴り出すのは10時くらいから夜中の2時だし(冬は人が住んでいるのか?状態のうちの近所、最近うるさくて眠れない。1ヶ月以上村祭りは続くわ。花火はうりさいわ。安っぽい旅芸人はウロウロするわ・・!で)それに付随し、当然、人のざわめきもその時間までですから・・
実際に買われると、大変なことの方が、良いことより多いかと思います。
ご自分の庭で・・ゆったりが・・一番。というのは正解。
Commented by uk_alien at 2008-07-08 20:46
■ ihokoさん、私が借りたところのオーナーも同じことを言ってましたよ。やっぱり長期テナントが楽で、特に家具付(といってもすずめの涙、もしくはIKEAの涙程度)で貸すのが一番だと。義理の母はオフィスビルを持っているのですが、そこのテナントの管理やら、建物の維持やらでいつもわずらわされています。「こんなんなら持ってない方がましよ!」という声をきくと、「贅沢だな」と思ってきましたが、最近なんとなく彼女の気持ちがわかるようになってきました。
何も心配しないで管理会社とソリシターに全てまかせて、たまに自分が利用する程度で採算も何も考えない...くらいのお金持ちだったら違うのでしょうけど、今の私達にセカンドホームは、必要ないわ。リタイヤを夢見てフランス語学習に励もうとおもっています。
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by uk_alien | 2008-07-06 02:59 | holiday | Comments(2)

カメラ小僧のイギリス帰化人。愛機はライカMモノクローム。はたと思い立って始めた大人ピアノ初心者で目下楽しくて仕方がないピアノ練習と音楽理論の勉強をブログに綴る日々 ー London UK


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