誰が無責任?

近所に住むジャーマンシェパードの雌犬サファイアは典型的な臆病者/乱暴者の二歳児。我家の愛犬ウォルターを含め、自分より小さい犬に会う度に突進してきては脅しをかける。自分より強そうな犬や人間には怖がって近づかない。

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オーナーはそのたびに誤るのだが、サファイアをリードにつなごうという意志はない。滅多に会うことがなければ他人ごとで済むのだが、一番近くに住むからか、散歩の時間の関係で頻繁に出くわすようになったからか、最近になってこのサファイアのウォルターに対する態度が険悪化してきた。

私がウォルターを抱え上げても、すかさず後ろに回ってジャンプしてウォルターの尻尾や足に噛み付いてくる。しまいにはサファイアの激突する勢いで私の足がすくわれ、ウォルターを抱えたまま私が地面に倒れむ始末。まじでしゃれにならない。

こういうオーナーに文句をいうのは正直言って効果がない。フィールドの管理団体に苦情を申し入れ、サファイアを常にリードにつながせるとか立ち入り禁止にさせるという手段もある。でも、そういう解決方法をとるより、一体何が起こっているのかを理解して、もっとプラクティカルな手段がとれないものかなと思って、馬や犬、特にジャーマンシェパードの経験が豊富な職場のお局様に相談した。

「困ったもんだ。それは飼い主がリーダーシップをとれていないから、犬が混乱してパックリーダーの役割を担ってるんだわ。でもそれに関してはオーナーが態度を変えない限り、傍からは何も出来ないからね。それに、ジャーマンシェパードはああみえて臆病者が多いからたちが悪い。そういえば以前私が馬に乗っているときに犬が私達に向かって突進してきたときがあったな。そのときには向かってくる犬に向かって腹の底からcommandingな声でGo away!と怒鳴ったの。そしたらその犬、向きをかえて行ってしまったわ。サファイアに効果があるかどうかはわからないけどやってみる価値はあるかもね。もしかしたら役に立つ本があるから貸してあげる」

で、借りた本がこれ↓。

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著者の見方で私達の状況を分析すると、こうなる:

犬は未だに狼時代のパックメンタリティーで状況理解、分析、行動をする。飼い犬と飼い主は犬の目から見れば同じパックメンバー。サファイアとオーナーのパックはオーナーがリーダーシップをとれていないため、サファイアがパックリーダーの役割を遂行する立場にある。社会化されていない臆病な性格のサファイアは散歩=ハンティングの状況で他のパック(=他の犬とそのオーナー)と出会うと、パックリーダーとしての適切な判断が出来ず、不要に脅威とみなして、特に自分の方が強いと思える相手には防衛的→攻撃的な態度をとってしまう。

一方、私とウォルターのパックは私のパックリーダーとしての地位が確立している。何が起こってもウォルターは一人で逃げたり、一人で戦おうとしたりせず、私の判断を伺う姿勢をとる。ところが、サファイアが私達のパックスペースを侵し、脅し/攻撃をしかけてきても、私は単にウォルターを抱え上げる行為しかとらない。これは、人間的には飼犬を守る行為であっても、犬の目からみれば全く何の意味もない行為だ。(狼のalpha maleがパックメンバーを守るために他の狼を抱き上げるのを見たことある?)つまり私は、パックリーダーとして私達のパックを犬的に防御するという行為をとっていない、という図式になる。人間の目から見れば、サファイアのオーナーが無責任。犬の目からみれば私が無責任。

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そう考えると、ウォルターに対し申し訳なく思った。気持ちを入れ替え、著者の推奨に従い、家の中でも外でもパックリーダーと自覚して行動する。散歩の際には亡義父のじじむさい、けれど頑丈なウォーキングスティックを持参し、次回の邂逅に備えた。

数日後、庭の門からフィールドに出ていつも通り暫くウォルターをヒールで歩かせていると、サファイアのオーナーの「Sapphire! No! Come!」の弱々しい声が。振り向くと、彼らの庭の門から飛び出したサファイアがこちらに向かってものすごい勢いで突進してくる。

ウォルターが足元にいるのはわかっていたのですぐに抱き上げ(「獣医代」という観念は狼になくても人間には大きい)、腰を落として姿勢を低くしウォーキングスティックをかざして朝の7時半にしてはとんでもないボリュームで「GO AWAY! NOW!!」とサファイアに向かって怒鳴った。すると、驚いたことにサファイアが5メートルくらい手前で立ち止まった。そこで私がもう一度腹の底から大きな声で「GO AWAY!」と怒鳴ると、彼女はくるりと向きをかえて飼い主の方へ走って行った。

「FUCK OFF, YOU BITCH!」とは言わず。朝だしね。

それぞれのパックは別々のゲートを使って隣のフィールドに出た。サファイアのオーナーが彼女をリードにつなぐのを遠目に確認し、私はのどの痛みを感じつつ、勝利の雄たけびをじっとこらえた。
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Commented by ihoko at 2008-08-18 01:56 x
敵は、動物(獣)ですから、油断は禁物ですが、結構大きな危なそうな犬で、更に多頭であっても、こちらが、強くきつい態度で命令すると確かに、結構効き目がありますね。収容所内は、これがものすごく大切なんです。じゃないとなめられるので・・。
家も、モモが時折やられるんですが、モモを抱き上げ、そこらにある石や棒で威嚇したり、口だけで、お前あっちに行け!と怒鳴り、余りにしつこい場合は、時には軽く蹴り倒すなどをすると、飼い犬との信頼関係も絶対的なものになりますよね。ただし・・家の場合、モモが重いので、傍から見たらヨタヨタした情けない攻防戦になっているとは思われますが・・・あはは・・。
Commented by uk_alien at 2008-08-18 07:16 x
■ ははは..栄養のある美味しいおやつのせいですね、モモの豊満さは。
イギリスではジャーマンシェパードは好まれる割に育てるのが難しく、犬の収容所に送られるケースが多いそうです。でも犬種が好きでレスキューする人たちも多く、家の近所にもそういうオーナーが結構います。ありがたいことに、そういう人たちは自分の犬の性質をよく理解してハンドルしているため、散歩の際にも他のオーナーとのコミュニケーションをしっかりとっています。例えば、遠めに他の犬を見かけた段階でリードにつないだり、「小さい犬が苦手だからこちらにこさせないで下さい」と礼儀正しく頼んだり、歩く道を変えたり。また、よく訓練されたおとなしいジャーマンシェパードでも念のため小型犬は避けているというオーナーにも結構会います。
私はジャーマンシェパードを特定して責める気は全くなく、大型犬だろうと小型犬だろうと、飼い主はパックリーダーとして責任ある行動をとるべきだ、と思っているんですが、残念ながらそうは思わない人も結構いるようですね。今回私はサファイアを仔犬の時から知っているのでこういう対処をとりましたが、知らなければ即座に管理団体にリポートしていたと思います。
Commented by muddymama at 2008-08-18 14:13 x
やりましたね!! なんだかもちらもスッキリした気分(笑
こんなオーナーはどこにでもいるんですよね、腹立たしいです。
ウチの近所でも、犬に独りで散歩させる家がありますが
とても迷惑な話です、だってトイレを外でさせて掃除しないということですから。
なるほど、飼い犬にとっては退治できない飼い主は無責任、そうですね。
でも、あっぱれです(笑)責任を見事に果たされて!
Commented by uk_alien at 2008-08-19 01:14 x
■ muddymamaにほめられるとはうれしい限りです。実は視点を変えた時点で、これまでサファイアに自分の率いるパックを舐められてた、と悟り結構むっときたんですよ。これは私のリーダーとしてのアサーティブネスの問題だ、と...笑。あれ以来サファイアとは遭遇していないんですが、ウォーキングスティックはしっかり持ち歩いて、直近のフィールドではいつも気をつけています。
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by uk_alien | 2008-08-16 20:19 | animals | Comments(4)

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