同じようで同じでない不思議

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これまで、電車の運転をご職業とするイギリス人には三人お目にかかったことがある。

三人、というのは母集団の数に対しあまりに小さいサンプルなので一般化してはいけない...と思いつつ、...似ている、あまりに似通いすぎている。というのが昨夜友人を介してのお食事会で三人目にあった時の印象。共通点として100%白人、66.6%が中年、がっしり大柄だがお腹はビール腹、という点はさておき、

① ゆったりと構え何事にもあわてない(といえばいいのか'To-be-honest,-I-don't-care'メンタリティーというのか...お気にされないご性格)
② ご職業に大変ご満足されている

昨夜の彼はキャリアを選択する際セールスの職業とこの電車の運転手という二つの選択があったそうだ。セールスの仕事は運転手の2倍の額は稼げそうだったが、有給休暇、病欠の有給処置、勤務時間、ストレス、年金を考えると、長い目でみて断然運転手の方がよいと判断したという。

彼の勤務時間は週35時間。週休三日が3週間に一度やってくる。超過勤務はないため、ホームライフは存分に楽しめるそうだ。勤務を終えれば引き摺るストレスは一切なし。労組さまさま、さらにさま、だろう。

「金融街の連中は年収10万ポンドやらそれ以上って稼いでるけど、働く時間でならすと自分の方が断然多く稼いでいることになるのさ。」

それでも客からの罵倒・暴力はまったくないとはいえないそうだ。一度は夜遅くにターミナルで運転席に座っているときに、黒人からのハッピースラッピング(理由もなく相手を殴っていい気分になるという昨今の風習)、顔面パンチを一度くらったらしい。警察には届けたが、CCTVの画像はターミナルの端までは届かず(!)お蔵入り。別の時には電車を夜の間格納しておくポイントでまだ乗車していた客(なんで最終駅で全員降車のチェックがなされないのだろう、という疑問はさておき)に「降りてくれ」といったところ、いきなりナイフが出てきたので当然すばやくその場を去ったそうだ。その乗客は警察が来たときにはいなくなっていたらしい。

こうした経験を除けば楽チンな仕事、だそうである。

一方、私は東京の丸の内線の車掌と友人関係だったことがある。彼は、小さいときから電車の運転手になりたかったそうだ。しかし、運転手になるのはかなり倍率が高く試験も簡単ではないので、車掌のキャリアを選んだそうだ。彼は車掌の仕事に大変誇りをもっており、乗客の安全が第一、そしてその第一義を遂行しつつ、電車をスケジュール通りに運行するのは大変だがやりがいはあるといっていた。線路のどこどこで○分の遅れが出がちなのだが、どこどこの直線ラインで大抵遅れはとりもどせる云々と真剣に言っていたのを覚えている。これまたサンプルは一人なので一般化してはいけない、のだが、私の記憶では、彼の職務モラールは大抵の鉄道関係者に共通のものであったような気がする。

「郷に入れば郷に従えだよ」

その通りだ。違いを云々しても仕方がない。しかし、私が興味を覚えるのは、一方では「鉄道システム」が定言的に「国にとって重要なインフラストラクチャーの一つ」として両国に同様に存在すことで、あたかも同質のものであるかのような錯覚を私たちに起こさせるのだが、もう一面ではその運行の仕方、運行実績、職員のモラールなどがしっかりとそれぞれの国の文化やだどってきた鉄道の歴史を反映して、その結果、両者はまったくもって「別物」なのだということを思い知らしめるという、そんな不思議な、異文化間のパラドックスに入り込んだような感覚だ。

ちなみにこの不思議さは怒りを超越することでやってくる。

PS こういう不思議な異文化感覚をスタートレックは巧みに表しているなと思う私は実は隠れVoyagerシリーズファンなのだった。
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Commented by nantoka at 2006-02-27 00:30 x
ほう~、その職業の方にお目にかかった事がありませんでした。満足しているとは、私の中では以外でした!
考えたら、日本人よりは精神面太くていらっしゃるので・・笑・・失礼!・・「I don't care・」の方が強いでしょうね!!

暗闇で、殴られたり、ナイフで脅されたら・・・う~んどうだろう・・怖くて次の日からビビリながら運転ですね~・・
日本の交通機関の正確さは、世界でも有名なので、文句言う時によく使ってましたが、「日本から来た」と言うと「ああ~」って様な感じになる運ちゃんが、いましたが・・・こうも違うのね~。

SF ファンですか?!! 義母と話合いますよきっと!! 彼女大大大好きですから~!
Commented by uk_alien at 2006-02-27 04:22
nantokaさん、私がお会いした方々は満足されていましたね。やはりベネフィットがすごくいいからでしょうね。もっと女性のドライバーが増えてもいいと思うのですが。

日本の交通機関の正確さのレベルはすごいです。当たり前だと思っていた自分が浅はかでした。今から考えればもう驚異的です。ドイツもそうだという話をきいたことがあります。

SFというより、スタートレック...なんです。私はテレビっ子ではないのですが、こちらに来てから旦那に毎日のように見せられ、洗脳されました。でもお義母さんがSFファンとは粋ですね。うちの義理ママはSF系は「うそっぽくてやなのだそうで、もっぱらコスチュームドラマですよ。 笑
Commented by 3ぱいんと at 2006-02-27 07:23 x
こちらでの知り合いに『電車の運転手の娘』という子がいます。私はそのことを知ったとき「あら、じゃあお父さん大変でしょう。朝早かったり、夜遅かったり。」と言うと、彼女「ううん、いい職業よ。休みは多いし、給料もいいし。あんないい仕事めったにないわよ。」と答えたのを聞き意外に感じたのを覚えています。
そうですか、彼女が言っていたことの裏づけがこんなところで取れてしまいました。
そんなおおらかな人たちの運転する電車、ちょっと遅れたくらいで毎朝腹を立てる私が愚か者でした。動いているだけありがたく思うべきですね。(笑
Commented by ロタ at 2006-02-27 18:19 x
ロンドンから初めまして♪
ランキングからやってきました。
なかなか興味深いですね、日本とイギリスの違い。
同じ職業でもやっぱり全然違いますねー。
ハッピースラッピングは遭遇したらほんと怖いですね。
Commented by leira-london at 2006-02-27 19:42 x
誇りをもっているのはよいですが、もうちょっと電車をおくれないようにしようとか思ってよぉ・・・日本を標準にしてしまうのがいけないのか・・・
Commented by uk_alien at 2006-02-27 22:10 x
3パインとさん、裏づけさせていただきました!霊気だのヨガだのと東洋ばやりですが、信号故障や車両故障で1時間くらいロンドンブリッジで足止めされているサラリーマンの皆様の、文句も言わずじっっっとまっている姿をみると、私は彼らのほうがよほど無我の境地に達し、既に菩薩と化しているのではとしばしば思います。

ロタさん、初めまして~。「ハッピー...」は私は運良くないのですが、旦那は私と会う前に一度あったそうです。黒人にいきなり顔面パンチ。許せないですね。

Leira-londonさん、私も本当にそう思います。誰が遅れないようにと考えれば電車はちゃんと動くんでしょうね。運転手でしょうか、組合でしょうか、乗客でしょうか、運行会社の役員でしょうか、線路のメンテの会社でしょうか、それとも政府でしょうか...。ちょっとタメイキ。
Commented by uk_alien at 2006-02-27 22:11 x
追記:

運転手の彼いわく、インフラはおっそろしく古く信号故障等は当たり前、スケジュールもラッシュ時のクラパムジャンクションは17のプラットフォーム全てに毎3分に電車一本の割りで組まれているそうで、何かあれば(そして大抵何かある)すぐにスケジュールがパンクするのが当たり前なのだそうです。一方、乗客も乗客で、車内は汚す、ごみは置きっぱなし、自動ドアも指を挟んでこじあけて乗り込んで/降りて混乱を招いているそうです。例えばロンドンビクトリアは屋内の駅なため衛星システムが届かず、マニュアルに切り替えてからドアを開けなければならず、そのため電車が停車してから切り替えが終了するまで暫く待たなければいけないそうなのですが、待てない乗客はこじ開けちゃうそうです。その結果車両に問題がおこるとそのドア以外の全部のドアが暫く開かなくなり乗客が足止めをくらうという。はあ~、根が深いですよね。ニワトリか卵か。

やっぱり電車に限っては大陸南部のメンタリティーでいったほうがいいんですよね、「明日間に合うな(Hasta mañana)」みたいな。 笑
Commented by amy at 2006-02-28 00:33 x
はじめまして。コメントいただき、そのリンクからやってきました。
電車といえばやはり時間の不正確さですよね。
ワタシが利用していた駅では電車がホームにきているから駆け込み乗車はいやだなあ、次でいっか、とのろのろ階段をくだっていくと運転手さんが「のってのって、まだ閉めないからだいじょうぶだよー」と余裕の笑顔。これがほぼ毎日だったから、どこの駅でもこんなことやってるんだろう、だから遅れちゃうんでしょ、と言いたかったけど、、、でもこれくらいの余裕というかココロの広さみたなのって大事かなって、今は東京のラッシュアワーで感じています。
Commented by Juni at 2006-02-28 12:12 x
はじめまして。ブログ拝見させてもらってます。
Uk在住暦はまだ4ヶ月なので冷静に2国の違いを悟るという境地には至っておりませぬが、電車の想像を超える不便さにはすでに辟易してます。私の住んでる片田舎ではネットワークも悪いし、高いし、本数少ないしで、全くのやる気なしだし、それを国民が期待してるわけでもなし。こうなったら電車なくししゃってもいいんじゃないかとおもいますねー(はい、極論ですが)。ある調査によれば、UKの鉄道はどこかのアフリカの国よりもクオリティーが低いという調査もありましたよね、以前。

ちなみに、私のパートナーは、国家公務員ですがやはり鉄道関係職員同様に時間がびっちり決まっていてそれ以上は(働きたくても)働けません。万が一締め切り等で残業する場合、その時間はしっかりカウントされ後でかならず休暇をとるか早退するかしなきゃならないんです。時間給でするようなタイプの仕事でもないのに勤務時間という点では非常に優遇されてるようですし、本人もそれを当たり前と感じてる様子。日本の過労死が英語になっちゃう訳ですよね。そんな概念ないんでしょうから。
Commented at 2006-02-28 14:24 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by uk_alien at 2006-02-28 23:19
amyさん、
>でもこれくらいの余裕というかココロの広さみたなのって大事かなって、今は東京のラッシュアワーで感じています。
そういう見方って時間がたつにつれ、そして通勤などで怒りを爆発させられる回数が増えるたび、どうしても忘れてしまうのでしみじみと感慨にふけりました。一理あり、だと思います。それに、確かに東京のラッシュアワーのすさまじさは壮絶。人間性を失わせます。そちらにもまたおじゃましますね。
Commented by uk_alien at 2006-02-28 23:49
Juniさん、こんにちは!そうそう、サードカントリー並だといっていました。オリンピック来る前になんとかなるのでしょうか?

勤務時間に関しては知り合いのカウンシルにお勤めされている方も同じことをおっしゃっていました。でもシティーで働く弁護士や一部の金融関係の人はやはりものすごい時間をこなしているようですね。M&A関係の商法を専門とするソリシターの知り合いは、土曜に「ちょっと仕事を片付けるために」職場に行って、家に帰ったのは火曜の夜だったそうで、しかもその間ほとんど睡眠をとるひまがなかったっていっていました。旦那いわく彼は「ネコのよう」で、人と話している最中やちょっとした合間に睡眠をとる要領と能力があるそうです。こういう人たちが勤務時間の合計をかさませて、結果イギリスはヨーロッパ一番勤務時間が長い国、になるのでしょうね。両極端ですね。あ、Weather manの感想、楽しみにしています。
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by uk_alien | 2006-02-26 22:49 | concept | Comments(12)

カメラ小僧のイギリス帰化人。愛機はライカMモノクローム。はたと思い立って始めた大人ピアノ初心者で目下楽しくて仕方がないピアノ練習と音楽理論の勉強をブログに綴る日々 ー London UK


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